顧客管理とは、顧客の情報を一元管理することです。
顧客の業界や規模などにとどまらず、顧客企業の決済フローや担当者とのやり取りまで一元管理します。
ただ、なんでこんな細かい管理が必要なんでしょうか?
最終的には少ないリソースで高い売り上げを作るためと言えます。
ただし、いきなりお伝えしても分かりにくいと思うので、本記事ではメンバー、リーダー、マネジメント、経営の4階層に分けてご説明していきます。
さらに顧客管理で何が出来るか、顧客管理をするときに実際に我々は何をするのか、最後に現在の顧客管理の実践方法についてもご説明します。
顧客管理の目的とは《階層別》
まず顧客管理の目的を企業の階層別<メンバー、リーダー、マネジメント、経営>にご説明していきます。
顧客管理の目的とは《メンバー》「営業活動の最大化」
現場レベルでの顧客管理の目的は『営業活動を最大化させること』です。
営業活動の最大化とは、営業担当者の行動量を増やすことです。
なぜなら、営業担当者の行動を増やすと1人当たりの売上増加に繋がるからです。
例えば、出来る営業はいつも忙しくしている一方、あまり成績が上がっていない営業は暇そうにしている場合もあるのではないでしょうか。
顧客情報を一元管理をすることで、休眠顧客の発掘やターゲット顧客とのつながりを探すことが出来ます。
顧客管理の目的とは《リーダー》「営業部隊の底上げ」
リーダーレベルでの顧客管理の目的は『営業部隊の底上げ』です。
営業部隊でありがちな悪い例は、個人商店の集まりとなってしまっていることです。
それぞれの営業のノウハウを共有することもなく、数字を稼げるエースに依存している状態。
これが個人商店の集まりの状態です。
この状態ではエースが辞めた途端に売上が上がらなくなります。
企業として営業部隊を組織する以上、全体の営業力を伸ばしていかなければなりません。
具体的には、『自社の商材や自社と相性がいい顧客の理解』『そのターゲット顧客に対する提案の質の向上』を営業部隊全体で共有することです。
顧客情報の一元管理をすることで顧客の分類や提案の共有が出来ます。
顧客管理の目的とは《マネジメント》「販売活動の効率化」
マネジメント層での顧客管理の目的は『販売活動の効率化』です。
具体的には、営業とマーケティングそれぞれで管理していた顧客情報を統合することで、販売プロセス全体での顧客の流れを可視化し、プロセス全体を最適化します。
本来なら営業とマーケティングは、販売という同じ目的のために動いているはずです。
しかし、施策の進め方や考え方の違いから分断されてしまっていることがよくあります。
そして、営業とマーケティングで情報が分断されているためチャンスを逃してしまっている場合がとっても多いのです。
では、どうすれば、統合されるのでしょうか?
単に「うまく力を合わせて連携しよう」と言ったところで連携が強化されるはずもありません。
答えは『可視化』です。
まさに目の前でチャンスを逃していることが分かると、何とかしようとなってきます。
そのために顧客情報を統合し”見える化”します。
顧客管理の目的とは《経営》「再現性の高い販売モデルの確立」
経営層の顧客管理の目的は『再現性の高い販売モデルの確立』です。
顧客情報を一元管理することで「顧客と自社の初めての接点~最終的な成約」までの動きを分析することが出来ます。
例えば、以下のように各ステップでの顧客の動きを全て取得できます。
- 初めての接点となるWEB・SNSでのコンテンツや広告
- そこから徐々に興味喚起するメール配信
- 問合せの後の営業の提案やヒアリング
- 最終的なクロージング
- またクロージング出来なかった顧客に対する再アプローチ…etc
上記の各ステップで顧客の動きが分かれば、顧客がどういうルートで成約に至っているか、そして各ステップでの最適な施策が分かります。
ここまで分かれば、あとは成約ルートに対してリソースを集中させればよいのです。
すなわち、少ないリソースで高い売り上げを作ることが出来るようになります。
これが再現性の高い販売モデルの確立です。
顧客管理の出来ることとは《階層別》
次に顧客管理をすることでどんなことができるようになるかを説明します。
顧客管理で出来ることとは《メンバー》「営業活動につながる情報の通知」
メンバーに対して顧客管理が出来ることは、「営業のきっかけになるような情報の通知」です。
営業活動を最大化させるためにはきっかけの情報が必要です。顧客管理を行うことでそうした情報の通知や閲覧が可能です。
具体的には、
- 既存顧客に対するアクションの抜け漏れ防止
- ターゲット顧客との社内のつながりの確認
です。
例えば、一度訪問した顧客に「今すぐは難しいから半年後くらいに連絡して」と言われたことはないでしょうか。
そして、その後本来連絡すべきであったのに、今目の前にいる顧客に対する営業を優先して、忘れてor後回しにしてしまってはいなかったでしょうか。
また、大手企業のように正面からの営業をほとんど受け付けない企業もあります。
そうした企業に対してはコネクションが必要となります。
もし社内でつながりがある人がいれば大きなチャンスとなります。
このように顧客情報を管理することで営業のきっかけになるような情報を増やすことが出来ます。
顧客管理の出来ることとは《リーダー》「営業勝ちパターンの共有」
リーダーに対して顧客管理が出来ることは、「営業部隊全体で勝ちパターンの共有」です。
具体的には、
- ホット顧客の絞り込み
- 営業ナレッジの共有
などがあります。
通り一遍等に営業活動しても、成約率は上がりません。
そこで、自社の商材を欲している企業の特徴を明らかにして、重点的にあたる必要があります。
そして、こうした特徴は実際に顧客と対面する営業の持っている情報が不可欠です。
次に営業ナレッジの共有は、特にクレームと提案資料の2つがあります。
過去に発生したクレームとその対処法を把握しておくことで、事前にクレームのリスクを予防できますし、引継ぎ時も安心して対応できます。
また営業効率を考えた場合に、非常に大きな影響があるのが提案資料の共有です。
それぞれの営業担当者が提案資料の作成にどれくらい時間を使っているでしょうか?
業界にもよるかもしれませんが、2割以上の時間を使っている人も少なくないはずです。
そして、その提案資料の内容は似ているのではないでしょうか?
提案資料のひな型があればなおよいですが、まずはそれぞれの営業担当者が使った提案資料が共有されれば、効率は何倍にもなります。
さらに、その提案資料を使ってどんなやり取りをしたかも蓄積されているため、一連の営業活動をうまくいった人のやり方を使うことが出来ます。
顧客管理の出来ることとは《マネジメント》「営業とマーケティングの情報の統合」
マネジメント層に対する顧客管理で出来ることは「営業とマーケティングの情報の統合」です。
まず顧客情報を一元管理し可視化することで、営業とマーケティングの壁が取り払われます。
次に、マーケティング⇒営業⇒成約までの流れを効率化することができます。
一般に、マーケティングが集客し見込みの高い顧客を営業へ送ります。
問題はマーケティングが送客した顧客が成約しにくいのかもしれませんし、営業は自身の抱えている案件を優先してしまっているかもしれません。顧客情報を管理することで、この販売の流れ全体を最適化することが出来ます。
また営業が一度訪問したが、成約しなかった顧客を再度マーケティングに戻して、育成するといったことも可能になります。
顧客管理の出来ることとは《経営》「成約までの顧客の動きの分析」
経営層に対して顧客管理で出来ることは「成約までの顧客の動きの分析」です。
今まで説明してきたように、各レイヤーに対して顧客管理が使われると、最終的には「顧客が初めて自社と接点をもったところから、成約するまでの動きを分析すること」ができます。
この顧客の一連の動きを”カスタマージャーニーマップ”と呼びます。
そして成約までの道のりが分かればリソースを集中することが出来ます。
例えば、最初の接点はリスティング広告が有効であれば、他の広告手段はやめて全てをリスティング広告に集中できますし
対象は中小企業の経営者がいいと分かれば、中小企業向けの経営者に対するセミナーの開催などが有効でしょう。
このように、全ての販売プロセスが統合されているからこそ、分かる情報を使って『リソースの選択と集中』を行い、今までと同じコストで今まで以上の売上を上げ続ける状態を作ることが経営層に対して顧客管理で出来ることです。
顧客管理でする5つのこととは
3つ目は顧客管理の仕組みを組織で導入するときに、ユーザーが何をするかを説明します。
具体的には以下の5つです。
- 記録|顧客情報・顧客とのやり取りの入力
- 統合|複数の接点からの顧客情報の統合
- 検索|使いたい時に簡単に検索
- 分析|成約しやすい顧客や提案の分析
- 閲覧|リアルタイムレポートととして閲覧
記録|顧客情報・顧客とのやり取りの入力
まずは顧客情報の記録です。
具体的には顧客企業の情報、担当者の情報、やり取りの履歴などです。
顧客企業の情報とは、ホームページに記載してある情報だけではなく、決済フローや担当部署の役割など「購買のために必要な情報で直接話さないと分からない情報」をより積極的に記録します。
担当者の情報は、経歴や役職、メインの業務などに加えて、より個人的な趣味嗜好や将来の目標なども把握しておくと、他の企業とは違う切り口での提案ができます。
最後にやり取りの履歴とは、その名の通り顧客担当者とのコミュニケーションの履歴の記録です。
やり取りの履歴の蓄積が、まさに”営業ノウハウ”となるので、整理の仕方・記録の仕方が非常に大切です。
例えば、以下のようにいくつかの項目を設定し、記録するとナレッジとして蓄積されるでしょう。
- 顧客のステータス
- 顧客に対する提案内容
- 今回の提案のゴール
- 提案した結果(顧客の反応)
- ネクストアクション…etc
ポイントは、「営業担当者が迷わない」&「整理しやすい内容」であることです。
統合|複数の接点からの顧客情報の統合
2つ目は顧客データの統合(≒一元化)です。
複数の部署や役割にまたがる顧客情報を1つにまとめ上げることです。
例えば、
扱う商材がちがう部署であれば、同じ企業を対象としている場合もあるでしょう。
その時に、すでに他部署で連絡が取れている企業に改めて新規でアプローチを仕掛けるより、他部署の伝手を使ったほうが速いこともあります。
また、役割が違う部署であれば、同じ情報を持っている場合もあるでしょう。
マーケティング部隊で集めた顧客の興味などと、営業が集めた情報を1つにするなどがあります。
こうした情報を1企業ごとに全て集約するのが『統合』です。
検索|使いたい時に簡単に検索
3つ目は顧客情報を簡単に検索できることです。
この場合の『検索』とは単に情報を集めればよいというものではなく
情報を見つけやすくする整理が必要となります。
例えば、似たような業界、規模、進捗フェーズなどで整理するとか
「クレームが発生した」「クロスセルできた」「成約しなかった」などイベントごとに整理する方法などがあります。
分析|成約しやすい顧客や提案の分析
4つ目は顧客の傾向を分析することです。
『顧客の属性』と『購買』の関係を複数の軸で分析することができます。
顧客の情報が1つに集約されていることで実現が可能になります。
顧客の分析はRFM分析やCPM分析、デシル分析など手法が確立されているものも多いので合わせてご確認ください。
閲覧|リアルタイムレポートととして閲覧
最後に『閲覧』ができます。
今までの記録・統合・分析してきたデータをリアルタイムレポートとして共有・閲覧出来ます。
リアルタイムレポートの閲覧が簡単にできるようになると、今まで見えていなかった顧客の動きが可視化され、今まで気づいていなかったチャンスを拾えるようになります。
それを全社員で推し進めることができるのが、顧客情報の一元管理の強みです。
顧客管理の実践方法とは
最後に顧客管理の実践方法を4つご紹介します。
エクセル|簡単無料にリスト化
エクセルでの顧客管理は、はじめやすく運用が楽です。
ほぼすべての人が使い方を知っているからです。
エクセルでの顧客管理で出来るのは、顧客情報の記録と統合、分析などです。
アクションの通知やリアルタイムレポートなどは出来ません。
表形式で一元化し、記録した情報を分析することができます。
しかし、項目が増えすぎると管理しきれなくなったり、式が複雑になり少しずれただけで修正できないなどの問題が起こります。
CRM|顧客情報を一元化
こうした問題を解決したのがCRM(Customer Relationship Management)です。
顧客関係管理と訳され、顧客情報を一元化するためのツールのことを指す場合もあります。
特に強みとなるのが、顧客情報の分析と統合です。
専用データベースと入力フォーム、閲覧画面が備わっているため、複数の情報をまとめ上げた様々な切り口で分析したり、分かりやすくレポートにしたりすることができます。
またこの後説明するSFA、MAとの連携がしやすいことも強みとなります。
SFA|営業進捗管理とアクション通知
そして特に営業の進捗管理に特化したのがSFA(Sales Forcr Automation)です。
前述の『顧営業活動の最大化』をとくに重点的に行っているツールです。
営業だけを切り出してツールとして普及したのは、今まで不透明になりがちだったからです。
営業担当者が嫌がりがちなツールへの記録をさせて、営業を見える化し、営業担当者本人にもメリットがある情報提供をするという部分を切り出したのがSFAです。
MA|マーケティングアプローチの自動化
最後にMA(Marketing Automation)です。
CRMで顧客情報を一元化し、SFAで営業が活発に動くようになった時に
マーケティングの施策を自動化するのがMAです。
またMAはオンラインでの顧客の動きを可視化するのに向いています。
こうしたオンライン上でのマーケティング活動に特化したのがMAと言えます。
まとめ
今回は顧客管理とは何かについて説明してきました。
以降の記事で顧客管理をエクセルで行う方法やツールの選定、自社開発などについて触れていきます。