エグゼクティブサマリー(Executive Summary)とは、事業計画書や提案書、調査報告書の冒頭に置く要約のことです。読み手である決裁者が「この資料を読む価値があるか」を数十秒で判断できるようにするために付けます。
日本語では「エグゼクティブ・サマリー」「エグゼクティブサマリ」「エグゼクティブ サマリー」と表記が分かれますが、いずれも同じものを指します。本記事では「エグゼクティブサマリー」で統一します。
本記事では以下を説明します。
- エグゼクティブサマリーの意味と、サマリー・概要との違い
- 英語のexecutive summaryとの書式の違い
- 書き方の5ステップと、記載する9項目
- パワーポイントで1枚にまとめる作り方
- 提案書・調査報告書の例文と、事業計画書のサンプル
- そのまま使えるテンプレート(無料ダウンロード)
エグゼクティブサマリーとは|意味と役割
まずエグゼクティブサマリーとは何かを説明します。意味、英語との違い、目的、付ける文書の種類の順に見ていきます。
エグゼクティブサマリーの意味|サマリー・要約・概要との違い
エグゼクティブサマリーの「エグゼクティブ」は経営層・決裁者を指します。つまり単なる要約ではなく、決裁者が意思決定するための要約です。ここが「サマリー」との最大の違いです。
| 用語 | 意味 | 想定する読み手 | 目的 |
|---|---|---|---|
| エグゼクティブサマリー | 意思決定者に向けた要約 | 決裁者・投資家・依頼元の責任者 | 読む価値があるかを判断してもらう |
| サマリー | 内容の要約全般 | 特定しない | 内容を短く伝える |
| 概要 | 全体像の説明 | 特定しない | 全体を把握してもらう |
| アブストラクト | 論文の要旨 | 研究者 | 論文を読むかを判断してもらう |
言い換えるなら「要旨」「要約」「概要」が近い日本語です。ただしこれらの語には「決裁者に判断させる」という含意がありません。社内でエグゼクティブサマリーという言葉が通じない場合は、「決裁用の要約」「判断していただくための1枚」と言い換えると意図が伝わります。
要約全般が単に「短くしたもの」であるのに対し、エグゼクティブサマリーは読み手に取ってほしい行動が書かれている点が決定的に違います。ここが抜けると、よくできた要約ではあるが決裁には使えない資料になります。
英語のexecutive summaryとは|日本語資料との書式の違い
executive summaryは英語圏のビジネス文書、特にビジネスプランや調査レポートで一般的な形式です。日本で作られるエグゼクティブサマリーとは、書式の慣習がかなり異なります。海外の投資家や本社に提出する場合は、英語圏の型に寄せる必要があります。
| 観点 | 英語圏のexecutive summary | 日本のエグゼクティブサマリー |
|---|---|---|
| 形式 | 段落による文章 | 図表を配置した1枚のスライド |
| 分量 | 1〜2ページ | 1枚。多くても3枚 |
| 配置 | 表紙の次、目次より前に置くことが多い | 目次の次に置くことが多い |
| 構成 | Problem(課題)→ Solution(解決策)→ Market(市場)→ Team(体制)→ Financials(数値)→ Ask(依頼) | 目的 → 事業名 → 事業概要 → ビジネスモデル → 実行計画 |
| 締め方 | the ask(相手に求める行動)を必ず明記する | 明記されないことがある |
英語で書く場合に最も注意すべきなのは最後のAskです。英語圏のexecutive summaryは「だから何をしてほしいのか」で終わります。出資額、承認、面談の設定など、求める行動を具体的な数字と期日で書き切ります。
日本語の資料では「ご検討のほどよろしくお願いいたします」で終わりがちですが、これは英語圏では何も依頼していないのと同じに読まれます。日本語で書く場合も、Askを明記する作法は取り入れる価値があります。
エグゼクティブサマリーの目的|読む価値の判断と、理解の補助
エグゼクティブサマリーは大きく2つの役割を持っています。
1.読む価値があるかを判断してもらう
事業計画書を読むのは、社外であれば投資家や銀行の担当者、社内であれば決裁者です。彼らは日々大量の書類を処理しており、読む価値があると判断したもの以外に時間を使いません。
そこで冒頭にエグゼクティブサマリーを置くことで、事業の価値と資料の価値を瞬時に判断してもらえます。裏を返せば、エグゼクティブサマリーの出来で判断が決まるということです。本文がどれだけ緻密でも、ここで興味を持たれなければ読まれません。
2.本文を読む際の理解を助ける
2つ目の役割は、全体像を先に示して以降の詳細の理解を助けることです。目次だけでは構造は分かっても中身が分かりません。エグゼクティブサマリーがあることで、詳細なデータや戦略が全体のどの部分を説明しているのかが把握できます。
そのため、エグゼクティブサマリーと以降の章は対応するように作ります。サマリーで触れた論点が本文に無い、逆に本文の重要な論点がサマリーに無い、という状態は避けます。
どんな文書に付けるか|事業計画書・提案書・報告書・企画書
エグゼクティブサマリーは事業計画書だけのものではありません。決裁者が読むビジネス文書であれば、いずれにも付けられます。文書の種類によって重点を置く項目が変わります。
| 文書 | 読み手 | してほしい行動 | 重点を置く項目 |
|---|---|---|---|
| 事業計画書 | 投資家・銀行・社内決裁者 | 出資・融資・承認 | 事業概要、ビジネスモデル、収益予測 |
| 提案書 | 発注検討者・稟議の決裁者 | 発注・稟議の承認 | 課題、提案内容、費用、期待効果 |
| 調査報告書 | 依頼元の担当者と決裁者 | 結論の採用、次の意思決定 | 結論、根拠、推奨アクション |
| 企画書 | 社内の承認者 | 企画の承認 | 目的、企画内容、体制、スケジュール |
提案書と調査報告書のエグゼクティブサマリーについては、本記事の後半に例文を掲載しています。文書ごとの具体的な違いはそちらをご覧ください。
参考までに、コンサルティングファームが作成した資料でエグゼクティブサマリーの実物を確認できます。

エグゼクティブサマリーの書き方【5ステップ】
ここからは実際の書き方を5つのステップで説明します。この順番で進めれば、必要な情報が揃っていて、かつ読みやすいエグゼクティブサマリーになります。
エグゼクティブサマリーの書き方【5ステップ】の流れ
読み手と行動を決め、9項目から絞り、1枚に削り、図解にし、最後に判断材料が揃っているか確認する、という5段階の流れです。
書き方は5ステップです。まず読み手と「してほしい行動」を決め、記載する9項目から4〜6個を選び、1枚に収まる分量まで削り、図解にし、最後に判断材料が揃っているかを確認します。以下、順番に説明します。
- 読み手と「してほしい行動」を決める
- 記載する9項目から4〜6個を選ぶ
- 1枚に収まる分量まで削る
- 図解にする
- 判断材料が揃っているか確認する
STEP1|読み手と「してほしい行動」を決める
最初に決めるのは、誰に読ませ、読んだあとに何をしてほしいのかです。ここが曖昧なまま書き始めると、内容が良くても「いい話だが、それで自分は何をすればいいのか」という反応で止まります。
してほしい行動は具体的に定義します。社内の承認がほしいのか、計画自体のレビューがほしいのか、協力者を紹介してほしいのか。それによって書くべき内容が変わります。
また、読み手が何を基準に判断するかも同時に押さえます。投資家であれば回収可能性、社内決裁者であれば既存事業との整合性やリスク、というように判断軸は相手ごとに違います。この軸に答える情報をSTEP2で選びます。
STEP2|記載する9項目から4〜6個を選ぶ
エグゼクティブサマリーに書ける項目は大きく9つあります。全部を書くと1枚に収まらないため、この中から選びます。1〜4は必須、5〜9から読み手の判断軸に合うものを2個ほど加えるのが目安です。
| 項目 | 書く内容 | 使うフレームワーク | 要否 | |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 資料の目的 | なぜ作成し、読み手に何をしてほしいか | — | 必須 |
| 2 | 事業名・案件名 | 後日思い出してもらえる特徴的な名称 | — | 必須 |
| 3 | 事業概要 | 誰に、何を、どうするか | 5W1H | 必須 |
| 4 | ビジネスモデル | その事業が成立する仕組み | ビジネスモデルキャンバス/カスタマージャーニーマップ/バリューチェーン/リーンキャンバス | 必須 |
| 5 | ニーズ | 顧客の課題と、それに対するソリューション | — | 選択 |
| 6 | 自社の強み | なぜ自社なら達成できるのか(経営陣の経験、既存事業のノウハウ) | — | 選択 |
| 7 | 市場 | 業界を取り巻く環境と、収益性を決める要因 | PEST分析/ファイブフォース分析 | 選択 |
| 8 | マーケティング戦略 | 販売と仕入の流れ | 4P | 選択 |
| 9 | アクションプラン | マイルストーンと達成指標 | WBS/KGI・KPI | 選択 |
項目の中身をどう書くかは、それぞれのフレームワークの記事で解説しています。事業計画書全体の構成から確認したい場合は事業計画書の項目や書き方をまとめた記事をご覧ください。
7の市場について、業界の収益構造をどう分析するか迷った場合はファイブフォース分析の解説記事にテンプレートがあります。8のマーケティング戦略は4Pの解説記事の手順どおりに埋めれば1行に要約できる形になります。
9のアクションプランは、立上げまでのマイルストーンとアクションを定義することです。ここが具体的であるほど迷わず進められますし、間違ったときに早く引き返せます。逆に曖昧だと収益化までの期間が延び、人件費などのコストがかさみます。社内・社外を問わず投資を受ける場合には明確である必要があります。
アクションプランの作り方はWBSの作り方とExcelテンプレートの記事で説明しています。エグゼクティブサマリーには、そこで作ったWBSから主要なマイルストーンだけを抜き出して載せます。
STEP3|1枚に収まる分量まで削る
エグゼクティブサマリーに決まった様式はありません。一般的には後に続く文書(事業計画書、調査レポート、企画書など)に合わせて、WordまたはPowerPointで作成します。配置する位置は文書の先頭、目次の次が一般的です。
分量は1枚にまとめるのが基本、多くても3枚以内に収めます。要約が3枚を超えると、読む価値を判断するという本来の役割を果たせなくなります。
削り方の基準は「必要な理由を説明できない項目は全て省く」だけです。考えた過程を見せたくなりますが、その情報は理解の妨げになります。STEP1で決めた「してほしい行動」に直結しない情報は落とします。
説明の順序はWHY→HOW→WHATにします。読み手はまず「なぜやるのか」を理解しないと詳細に進んでくれません。項目でいえば1の資料の目的と3の事業概要がWHYにあたります。
STEP4|図解にする
絞り込んだら図にします。文章で3行かかる説明も、図なら一目で伝わります。特にビジネスモデルは文章にすると必ず長くなるため、図解が効きます。
ビジネスモデルキャンバスなどのフレームワークをそのまま貼るのではなく、最重要の項目だけを抜き出して図示します。誰から誰へ、何が、いくらで流れるのかを矢印で描くピクト図解の考え方が使いやすいです。
アイコンを使うと図が読みやすくなります。以下は商用利用しやすいアイコン素材のサイトです。
図をどう配置すれば見やすくなるかは、次章のパワーポイントでの作り方で具体的に説明します。
STEP5|判断材料が揃っているか確認する
最後に、読み手が判断するための材料が入っているかを確認します。エグゼクティブサマリーは読み手が本文を読む価値を判断するためのものなので、判断の根拠となるデータが無ければ役割を果たしません。
具体的には次のようなものです。
- ニーズを裏づける調査結果があるか
- 開発から販売までの流れが図で示されているか
- 1年後までのアクションプランが具体的か
- 費用と、それを回収する道筋が書かれているか
- 読み手に求める行動が明記されているか
判断の軸は相手によって違います。STEP1で定義した読み手を思い浮かべながら、その人が知りたい数字が入っているかを確認してください。
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パワポでのエグゼクティブサマリーの作り方
日本のビジネス文書では、エグゼクティブサマリーをパワーポイントの1枚のスライドにまとめるのが最も多い形です。ここではそのレイアウトと、避けるべき作り方を説明します。
スライド1枚のレイアウト|3ブロック構成
1枚を上下3つのブロックに分けます。上から「結論」「図」「判断材料」の順です。読み手は上から下へ読むので、最初に結論、最後に判断材料という並びにします。
上段には「◯◯事業への出資を判断いただきたく、事業内容と回収計画をまとめました」のような結論を1〜2行で書きます。中段は事業の全体像で、パートナー・自社・顧客のような登場人物を四角にし、「何が」「いくらで」流れるのかを矢印に添えます。下段は数値・スケジュール・依頼事項の3点を横並びに置きます。縦方向の配分はおよそ2割・6割・2割です。
| ブロック | スライドに占める割合 | 書く内容 |
|---|---|---|
| 上段|結論 | 2割 | 何のための資料で、何を判断してほしいのかを1〜2行。ここだけ読めば用件が分かる状態にする |
| 中段|図 | 6割 | ビジネスモデルや全体像を1つの図で示す。図は1枚につき1つまで |
| 下段|判断材料 | 2割 | 数値、スケジュール、依頼事項を3点まで。横並びに置く |
上段の結論は、スライドのタイトルとは別に書きます。「新規事業◯◯について」はタイトルであって結論ではありません。「◯◯事業への出資を判断いただきたく、事業内容と回収計画をまとめました」まで書いて初めて結論になります。
下段の判断材料は、STEP5で確認した項目のうち、その読み手が最も気にする3点に絞ります。4点以上並べると、どれが重要なのかが伝わりません。
ビジネスモデルを1つの図にまとめる
中段の図が、エグゼクティブサマリーの成否を分けます。ここで事業の全体像が伝わらなければ、下段の数値を見てもらえません。
フレームワークをそのまま貼るのは避けます。ビジネスモデルキャンバスは9マスありますが、9マス全てをスライドに載せると文字が小さくなり読めません。そのフレームワークで整理した結果から、事業の肝になる3〜5要素だけを抜き出して描き直します。
描き方の基本は、登場人物を四角、やり取りを矢印にすることです。矢印には「何が」「いくらで」流れるのかを添えます。これだけでビジネスモデルはほぼ表現できます。
WEBサービスのように顧客の行動が収益に直結する事業では、ビジネスモデルキャンバスよりカスタマージャーニーマップのほうが図にしやすい場合があります。作り方は以下の記事にまとめています。

やってはいけないこと|文字量・色数・フォント
左のNG例は、見出しの下に複数色のアイコンと、太さも色もばらばらな文章がすき間なく並んでいます。文字量が多く色数も4色に増え、フォントも不統一なため、どこが要点か読み取れません。右のOK例は、大きな見出し1本と、間隔を空けた3つの要素だけで構成し、色はメインカラーとアクセント1色の2色に抑えています。余白が十分にあるぶん、要点がひと目で伝わります。
エグゼクティブサマリーが読まれない原因のほとんどは、内容ではなく見た目です。以下は特に多い失敗です。
- 本文をそのまま縮小して貼る|要約ではなく圧縮になっており、結局読まれません
- 図を2つ以上並べる|どちらを見ればよいのか分からなくなります。1枚に図は1つです
- 色を4色以上使う|ベース色、文字色、強調色の3色までに抑えます
- フォントを混在させる|1つの資料で1種類にします
- 本文と同じ粒度で書く|サマリーは判断のための資料であって、説明のための資料ではありません
配色やフォントの選び方、余白の取り方といったスライドの見た目そのものについては、パワーポイントデザインのコツの記事で詳しく説明しています。エグゼクティブサマリーは資料の顔になる1枚なので、ここだけでも整えておく価値があります。
作る時間が取れない場合や、社外に出す資料で仕上がりを担保したい場合は、資料作成の代行もご相談いただけます。
エグゼクティブサマリーのサンプル・例文
ここからは実際のサンプルと例文を掲載します。事業計画書のサンプルが2種類、提案書と調査報告書の例文が1つずつです。ご自身が作る文書に近いものを参考にしてください。
サンプル1|事業計画書(フレームワーク型)
一般的なフレームワークを組み合わせて作るパターンです。分析の裏づけがあることを示したい場合に向いています。

項目は以下の8つです。
- 事業計画書の目的
- 事業名
- ビジネスモデル(ビジネスモデルキャンバス、バリューチェーン、カスタマージャーニーマップ、リーンキャンバス等)
- 外部環境分析(PEST分析)
- 企業分析(3C分析)
- 経営分析(収益予測)
- マーケティング戦略(4P)
- アクションプラン(KGI、KPI)
サンプル2|事業計画書(構成連動型)
後に続く事業計画書の構成をそのままなぞるパターンです。本文とサマリーが対応するため理解されやすく、ビジネスモデルの説明に面積を割いているので、事業の中身で印象づけたい場合に有効です。

項目は以下の6つです。
- 事業計画書の目的
- 事業名
- 事業概要(誰に、何を、どうする)
- ビジネスモデル(ビジネスモデルキャンバス、バリューチェーン、カスタマージャーニーマップ、リーンキャンバス等)
- 経営分析(収益予測)
- アクションプラン(KGI、KPI)
例文1|提案書のエグゼクティブサマリー(業務システム導入の稟議)
社内稟議に添える提案書の例文です。以下は架空の設定で、金額と期日は伏せ字にしています。読み手は稟議の決裁者、してほしい行動は「承認」です。
提案の目的
受注管理システムの導入について、稟議のご承認をお願いいたします。現状の課題
受注管理を営業部の共有Excelで行っており、月次の集計に毎月3営業日を要しています。また同一顧客が複数の表記で登録されており、請求漏れの原因になっています。提案内容
受注から請求までを1つのシステムで管理し、顧客マスタを一元化します。既存の会計ソフトとはCSV連携で接続するため、会計側の改修は不要です。期待できる効果
月次集計の作業時間を削減し、重複登録に起因する請求漏れを解消します。顧客ごとの受注状況を営業部全員が同じ画面で確認できるようになります。費用
初期費用◯◯円、月額◯◯円。導入から◯ヶ月で、削減できる作業工数が費用を上回る見込みです。進め方
◯月に要件確定、◯月に試験運用、◯月に本稼働。営業部から3名を選定メンバーとして充てます。ご判断いただきたいこと
本提案の承認と、選定メンバー3名の工数確保についてご承認をお願いいたします。
提案書のエグゼクティブサマリーで最も重要なのは、最後の「ご判断いただきたいこと」です。稟議は承認する側が「自分は何にハンコを押すのか」を確認できないと止まります。承認の対象を具体的に書き切ってください。
提案書そのものの構成については新規事業企画書の書き方の記事にテンプレートを載せています。
例文2|調査報告書のエグゼクティブサマリー(市場調査の結果報告)
クライアントに納品する市場調査報告書の例文です。こちらも架空の設定です。読み手は依頼元であるA社の担当者と決裁者、してほしい行動は「結論の採用と次の意思決定」です。
本報告書の目的
A社による◯◯市場への新規参入の可否について、判断材料をご提供することを目的としています。調査の範囲と方法
国内の◯◯市場を対象に、公開統計の分析、既存事業者◯社へのヒアリング、利用企業◯社へのアンケートを実施しました。調査期間は◯年◯月から◯月です。結論
新規参入は可能と判断します。ただし市場全体ではなく、本報告書でセグメントBと定義した領域に限定して参入することを推奨します。結論の根拠
第一に、セグメントBは既存事業者の対応が手薄で、利用企業の不満が集中しています。第二に、A社の既存の販売網がセグメントBの顧客層と重なっており、新規の販路構築を必要としません。留意点
セグメントBは単価が低いため、初年度の売上規模は限定的です。全社の売上構成に与える影響は小さいという前提でご判断ください。推奨するアクション
セグメントBに絞った試験提供を◯ヶ月間実施し、その結果をもって本格参入を判断されることを推奨します。本報告書の構成
第1章に市場規模、第2章に競合の状況、第3章にセグメント別の需要、第4章に参入シナリオを記載しています。
調査報告書のエグゼクティブサマリーは、結論を最初に置き、根拠と留意点をセットで書くのが型です。留意点を書かないと、都合の良い部分だけを読まれて判断を誤らせます。
最後の「本報告書の構成」は、読み手が本文のどこを読めばよいかを示すためのものです。エグゼクティブサマリーの2つ目の役割である「理解の補助」がここにあたります。
報告書全体の項目と構成については市場調査報告書の項目や構成の記事で事例を交えて説明しています。
エグゼクティブサマリーのテンプレート(無料ダウンロード)
上のサンプル1・2をそのまま編集できるテンプレートを配布しています。以下の2種類です。
- フレームワークを用いたエグゼクティブサマリー(サンプル1)
- 事業計画書の構成に沿ったエグゼクティブサマリー(サンプル2)
以下のフォームに組織名・氏名・メールアドレスをご入力いただくと、メールでテンプレートをお送りいたします。
ご入力いただいた個人情報は、テンプレートの送付と、それに関するご連絡のために利用します。送信の前にプライバシーポリシーをご確認いただき、フォーム内の「プライバシーポリシーに同意します。」にチェックを入れてください。
フェーズ別・事業形態別の書き方
同じ事業計画書でも、事業のフェーズと形態によって重点を置く場所が変わります。ここは自社の状況に当てはまるところだけお読みください。
立上期は将来性、伸長期は実績を説明する
立上期は、この事業を行う意義と将来性を説明します。うまくいけば社会にどんな影響を与えるか、この事業を行うことで何が得られるかを書きます。
初期は仮説ベースで実績や根拠が乏しいのが普通です。そのぶんアクションプランは具体的である必要があります。何をやるかも決まっていない段階でお金を出す人はいません。まだ検証できていないものについては、いつどうやって検証するかを書ければ十分です。
伸長期は実績を説明します。どんな仮説検証を行い、どのくらい売れたのかを書きます。売上や利益で語れるのが最良ですが、それ以外にもリード顧客の数と質、関係構築の状況などが材料になります。
伝えるべきは「適切なアクションを積んできた」という事実です。マイルストーンと実績が対応して見えるように並べてください。
事業形態別のフレームワークの選び方
ビジネスモデルをどのフレームワークで表現するかは、事業形態によって使い分けます。
| 事業形態 | 使うフレームワーク | 理由 |
|---|---|---|
| 迷ったとき・一般的な事業 | ビジネスモデルキャンバス | 業界を問わず項目が網羅されている |
| WEBサービス | カスタマージャーニーマップ | 顧客の動きによって打つべき施策とキャッシュポイントが変わるため |
| 製造業 | バリューチェーン | 仕入からロジスティクス、販売までの流れを定義する必要があるため |
ビジネスモデルキャンバスの書き方は事業計画書の記事の中で説明しています。どれを選ぶか迷ったら、その事業を成立させるために必要な要素が漏れなく入るものを選んでください。
エグゼクティブサマリーのよくある質問
エグゼクティブサマリーは何枚が適切ですか
1枚が基本で、多くても3枚以内です。パワーポイントであれば1スライド、Wordであれば1〜2ページに収めます。それ以上になる場合は、読み手の判断に直結しない情報が混ざっている可能性があります。
エグゼクティブサマリーとサマリーの違いは何ですか
サマリーは内容の要約全般を指すのに対し、エグゼクティブサマリーは決裁者が意思決定するための要約です。読み手に取ってほしい行動が明記されている点が違います。本記事の冒頭で、概要・アブストラクトも含めて表にまとめています。
エグゼクティブサマリーの言い換え・日本語訳はありますか
近い日本語は「要旨」「要約」「概要」です。ただしこれらには決裁者向けという含意がないため、社内で通じにくい場合は「決裁用の要約」「判断していただくための1枚」と言い換えると意図が伝わります。
WordとPowerPointのどちらで作るべきですか
後に続く本文に合わせます。事業計画書や提案書をPowerPointで作るならPowerPoint、報告書をWordで作るならWordです。文書の途中で形式が変わると読み手の負担になります。図で全体像を見せたい場合はPowerPointのほうが作りやすくなります。
英語でexecutive summaryを書くときの構成は
Problem(課題)、Solution(解決策)、Market(市場)、Team(体制)、Financials(数値)、Ask(依頼)の順が一般的です。日本語の資料と違い、図ではなく段落による文章で書きます。最後のAskで求める行動を数字と期日まで書き切るのが英語圏の作法です。
まとめ
エグゼクティブサマリーは、決裁者が「この資料を読む価値があるか」を判断するための要約です。単に短くまとめたものではなく、読み手に取ってほしい行動が書かれている点が普通の要約と違います。
書き方は5ステップです。読み手としてほしい行動を決め、9項目から4〜6個を選び、1枚に収まるまで削り、図解にして、判断材料が揃っているかを確認します。パワーポイントで作る場合は、結論・図・判断材料の3ブロックに分けると形になります。
事業計画書に限らず、提案書でも調査報告書でも、要約して相手に判断してもらう場面は必ず来ます。本記事のサンプルとテンプレートを使って作ってみてください。
本記事で紹介した2種類のテンプレートは、無料でダウンロードいただけます。


