本記事では市場規模とは何か、そして調べ方を説明していきます。
市場規模とは
そもそも市場とは
そもそも市場とは何なのかからご説明します。市場とは「一定の期間に売り手と買い手が存在する環境のこと」です。
つまり一定の区切りがある環境下で買い手と売り手が存在すれば市場となります。それではその区切りとは何なのでしょうか。
例えば自動車市場の中に中古車市場や軽自動車市場が入ってくると思いますが、どれが市場になるのでしょうか?
結論から申し上げると全てが市場です。ではその違いは何なのでしょうか。
市場規模とは
まず市場規模とは、一定の期間内の市場の総売上高のことです。
そして市場規模が分かることで自分の事業が対象としている市場に十分な大きさがあるかを判断することが出来ます。
従って、前項の自動車市場と中古車市場の違いは何かという質問は、一定以上の大きさがあればどちらも市場として成立しているということになります。
ペルソナと市場規模の関係は
市場調査を進めるうえでマスマーケティングとペルソナマーケティングという2つの考え方があります。
マスマーケティングとは可能な限りマーケティングを行う対象者を絞り込まないやり方であり、ペルソナマーケティングとはたった1人までマーケティング対象者を絞り込んで、その後2人、3人・・・と広げていく手法です。
一般に市場規模を考える場合はマスマーケティングの考え方で進めていくと思いますが、近年だと絞り込みが出来ていないと実際の立上のタイミングでの躓きが発生する場合も多いです。
そこでペルソナで絞り込みをしてちょうどいい規模のセグメントを対象とするとよいです。
またマスマーケティングの方が以前から存在する考え方であり、ペルソナマーケティングは最近の考え方です。
市場規模を調べる場合はその部分を念頭に置いて、相手に合わせた説明をすることも重要です。
市場規模の調査理由・目的3つ
次に市場規模の調査理由や目的としてよく使われる3つご紹介します。
- 単価や販売個数の目標を立てるため
- 必要サンプル数の把握をするため
- 競合との差別化要因を探すため
1.単価や販売個数の目標を立てるため
その市場の規模やシェア、販売個数や平均単価等が分かれば、自社が事業を作る時に、単価や販売個数の目標値を設定しやすくなります。
そして目標とする単価や個数によって、マーケティングの戦略が変わります。
基礎の振り返りになりますが、自社の売上=単価×販売個数です。
この時の販売個数は市場全体のうちの自社のシェアとなります。
すなわち、自社の売上=単価×(自社のシェア/市場全体の販売個数)となります。
例えば、単価が高いものであれば1クライアントごとに1人の担当を当てて、丁寧に営業させてもコストパフォーマンスが見合うでしょうし、
単価が低く、たくさん裁く必要があるものであれば、代理店やECなどを活用して広くリーチする手法を用いないと利益が出てこなくなります。
このように確かな利益を作れる事業であるかは、その市場の単価や販売数依存する部分が大きいので市場規模を調査することが大切となります。
2.必要サンプル数の把握をするため
マーケティングを行う際は市場調査を必ず行います。いくら良いアイディアだと思ったとしても顧客が反応しないことはいくらでもあるからです。
そしてその時にどのくらいの規模の調査を行えば確からしいと言えるでしょうか。
確からしさは母数から考えます。
これが市場規模の調査をする理由2つ目です。
市場規模から必要サンプル数が分かるので、それ以後の市場調査に信憑性が増します。
競合との差別化要因を探すため
次章でまとめて説明しますが、市場規模を調べる際にシェアや単価、個数なども調査します。
その市場における各企業のこうした項目が把握できれば自分たちとの差別化要素を見出しやすくなります。
簡単なところで行けば高級路線での差別化や、既存のリードカンパニーのアドオンサービスでいく、などが考えられます。
それ以外にも業界の特徴などを数値化出来ればより具体的に差別化することが出来ます。
市場規模の調べ方のコツ3つ
ここまで市場規模について説明してきましたが、本章では実際の書き方の前に抑えるべき書き方や調べ方のコツを説明していきます。
具体的には下記の3点になります。
- 市場規模と市場の定義の関係
- 市場規模の正確性
- 市場規模の調査にかける時間
市場規模と市場の定義の関係
まず市場規模を調べる上で迷うポイントが市場の定義です。市場の定義によって市場規模が全く異なります。
つまり市場規模を決めるうえで市場の定義が最も大切です。
特に現在は顧客の嗜好が多岐に渡り、それぞれの細分化された市場毎にマーケティング方法が異なります。
色々なセグメントの切り方がある中で適切なボリュームに絞り込んだ市場の定義を行う必要があります。
ペルソナまで落とし込んでからそれをセグメントまで広げていきます。
次項とも関連しますが、市場の定義が具体的で5W1Hなどに落とし込まれている程マーケティング手法の決定や数値の測定がしやすいです。
可能な限り詳細に市場の定義を行うようにしましょう。
市場規模の正確性
次は市場規模の数値の正確性について説明します。市場規模を調べて出てくるのは公的機関などが出しているような大きなセグメントの数値しか出てきません。
そこで前項のように市場の定義を明確にして、それぞれのセグメントの数値から推定していきます。
例えば「関東周辺でタブレットを導入している美容室の中で小規模(従業員10人以下)のところ」とすると、
- 関東周辺の美容室数・売上
- 全国でのタブレットを導入している美容室率
- 小規模の美容室の割合
を組み合わせて、推測していきます。
このように手に入る公的データを元に組み合わせて値を推測します。
この時の推測値の確からしさは推測のロジックに依存します。すなわち市場の定義に依存します。
市場規模は推定するものであり、そのロジックが大切であることを頭に留めておきましょう。
市場規模の調査にかける時間
市場規模はあくまで外観を把握するために行います。突き詰めた市場分析や市場調査は後のフェーズで行います。
市場規模は戦略立案時の事前デスクトップリサーチと位置づけ、あまり時間をかけすぎないようにしましょう。
同様に、数値の部分も細かい部分まで詰めるのではなく、ざっくり把握することに注力しましょう。
多少の誤差があっても気にせず値を出して、その後の実践や検証を行いましょう。
市場規模の調査で把握すべき項目3つ
次は市場規模を調べる際に把握すべき項目3つをご説明します。
具体的には以下の3つです。それぞれご説明いたします。
- 市場(市場、売り手、買い手)
- 売上(現在、過去、推移)
- シェア(競合、割合)
市場
まずは市場を定義しその市場や業界の全体感を調査いたします。
具体的には売り手と買い手を長際します。
売り手
売り手というのはいわゆる顧客のことであり、顧客を5W1Hで落とし込みます。
買い手
買い手とは仕入のことであります。その他ビジネスモデルを把握することが大切になります。
売上
次に売上を調べます。売上のために以下の項目を調べます。
- 単価
- 個数
- リピート率
- 売上総額
単価
まずは業界の平均単価がどの程度かを把握します。平均単価と比較して自社がいくらにするのか、いくらにすれば利益を見込めるのかを把握します。
単価の推移も調べておきましょう。高級路線がはやっているのか、お手頃商材が多いのかなどはマーケティング戦略を決めるうえで必要な情報となります。
個数
業界の平均の販売個数を調べます。季節により差があるような商材は季節ごとと年間平均、コンスタントに売れる商材の場合は年間平均などがあるとよいでしょう。
こちらも過去の推移も把握しましょう。
リピート率
またもし可能であるならば1顧客のリピート率や継続購入回数も把握しておきましょう。
市場の構造を理解するうえで重要な要素となります。
売上総額
上記のような項目を統合して出てくる値が市場全体の売上です。
この市場全体の売上がいわゆる市場規模となり、この値が十分に大きければその市場は狙う価値があるということになります。
シェア
最後にシェアを把握します。これはすなわち競合の状況を調べる事になります。
具体的には以下の項目を調査します。
- 競合
- 競合との関係性
- シェア
競合
まずは主要な市場の競合をリストアップします。
上位のプレーヤーを調査して、それぞれの立ち位置や特徴をざっくり把握しましょう。
競合との関係性
競合間の関係性や自社と競合の関係性を定義していきます。
業界のプレーヤー以外の関係者も含めた業界構造を理解します。
シェア
最後に各競合の売上毎のシェアを明らかにします。
特に主要なプレーヤーの数値を把握します。
市場規模の調査手順
次に市場規模を進める手順を説明していきます。
- 市場の定義
- 統計データの調査
- 推定
1.市場の定義
まず市場の定義をします。
色々なセグメント分割しながら自社の市場の定義を行います。
こちらの記事でセグメンテーション分析について説明しておりますのでご覧ください。
【図解】セグメンテーション分析とは?位置づけと手順を図を交えてご説明します
自社の市場が簡潔に説明できるようにしておきましょう。
2.統計データの調査
次に定義した市場のデータを調査します。
公的機関等が出している統計データ等を調べてまとめていきます。
3.推定
最後に出てきた数値を元に推定していきます。
推論を元に計算をしていきます。
こちらの本などが参考になります。
市場規模を調べるのに役立つ統計データ集
最後に市場規模を調べるのに役立つデータサイトをご紹介いたします。
・調査のチカラ ITやライフスタイルなど | ・日本化粧品工業連合会 化粧品関連 |
・政府統計の総合窓口 国民の調査など | ・国立社会保障・人口問題研究所 人口統計データ |
・経済ニュース 経済関連のレポート | ・総務省統計局 家計調査、労働力調査など |
・日本アパレル工業技術研究会 アパレル関連 | ・行政ウェブサイト 小売店や飲食店など |
・矢野経済研究所 ライフスタイル(食、消費財、ファッション)、建築、医療など | ・総務省統計局 家計調査など |
・JMR生活総合研究所 食、ブランドなど | ・経済産業省 商業統計など |
・HoNote ライフスタイルなど | ・日本百貨店協会 百貨店情報 |
・インテージ 流通、ライフスタイル、国際関係、エンタメなど | ・一般社団法人新日本スーパーマーケット協会 スーパーマーケット情報 |
・MMD研究所 IT系(SNSなど) | ・一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会 コンビニなど |
まとめ
今回は市場規模について説明しました。
事業を考えるときにまず最初に行うことなので事業開発に興味がある方は必ず抑えるようにしておいてください。
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