この記事ではマーケティングリサーチの手順を以下の4つのポイントでご説明していきます。
- なぜマーケティングリサーチが必要か
- マーケティングリサーチの手順の<実例有り>
- マーケティングリサーチで失敗しやすいポイント
- マーケティングリサーチを成功させるためにやるべきこと
この記事をお読みいただくとマーケティングリサーチをする中で実際の事業や現場との乖離を防ぐことが出来るようになります。
マーケティングリサーチは仮説→計画→検証→考察の順で行う
ここまではマーケティングリサーチの必要性についてご説明してきましたが、ここから実際の手順についてご説明していきます。
マーケティングリサーチは以下の4つの手順で進めていきます。
- 仮説構築
- 調査計画
- 調査&検証
- 分析&考察
マーケティングリサーチ手順①仮説構築
マーケティングリサーチの最初の手順は仮説構築です。事業の目指しているところが何で、現状はどういった状況なのか。そしてその溝を埋めるためにはどういうマーケティング課題を解結する必要があるのかを明らかにします。
その際、AsIsToBe分析というフレームワークを使用します。
AsIsToBeフレームワークとは
AsIsToBeフレームワークとは現状(=AsIs)と目指している状態(=ToBe)とその間の溝(=課題)を視覚的に明らかにする手法です。以下のように現状とあるべき姿を書いた後に、その間の溝が何なのかを定義していきます。
こちらのURLからテンプレートがダウンロードできますので是非ご活用ください。
以下で目標(=ToBe)、現状(=AsIs)、現状と目標の溝(=マーケティング課題)の例をご紹介していきます。
目標|ToBeの例
まずは目標を設定します。ここではまず実現可能性ではなく、目指したいものを定義するようにしましょう。そして可能な限り具体化するようにしましょう。例として3つご紹介します。
- 今期売り上げを前年比1.5倍にあげたい
- 今まで取れていなかった年収1500万円以上の富裕層を新規に獲得したい
- 新規顧客獲得コストを50%下げたい
現状|AsIsの例
次に目標に対する現状を定義します。今の状態を全て羅列するのではなく、目標に対しての現状を定義するようにしましょう。
- 昨年は展開エリアの関東圏の中でも特に港区、千代田区、中央区の売上が80%だった
- 従来は1人暮らしの世帯年収500万円以下の層がメインターゲットだった
- 今までは広告出稿のみで新規顧客を獲得していた
現状と目標の溝|マーケティング課題の例
現状と目標が定義できたら、その間の溝を定義します。なぜ現実と目標にギャップがあるのか、どうすれば埋められるのか、両者の溝とは一体何なのかを定義していきます。
- 港区、千代田区、中央区の顧客の特徴は○○。それに対して他の展開エリアの特徴は△△である。他の展開エリアの○○な顧客の特徴とアプローチ方法、△△な顧客のニーズが分かれば売上増が見込める。
- なぜ自社の商材は1人暮らしの世帯年収500万円以下の層にうけたのか。そして、彼らと年収1500万円以上の富裕層のニーズの違いは何かが分かれば獲得施策がうてる。
- 同業他社の新規顧客獲得施策で低コストを実現している施策は何か。周辺業種でも同様の課題を解結した事例はないかが分かれば顧客獲得コストの削減施策が分かる。
マーケティングリサーチ手順②調査計画
マーケティングにおける課題が定義できたら、次にそれを調べる計画を立てます。大きく以下の3つのポイントで進めていきます。
- マーケティング課題を解決するために何の調査をするか
- どうやって情報を取得するか
- どうやって調査を進めていくか
マーケティング課題の解決策の調査方法の定義
まずマーケティング課題を解決するためにどんな調査をすれば良いかを検討します。
例えば、最初にアンケート調査をして、仮説を立てて、その後デプスインタビューで深掘りしていく、といった進め方などです。以下の大きく3つに分かれます。
以下にマーケティングリサーチの方法と使い分けをまとめてありますのでこちらも併せてご覧ください。
情報元|ヒアリング対象者、文献、統計データ
調査の方法が決まったら、次に情報の出典元を定義します。
目的と方法に対して、どの対象者・文献・データであれば説得力があるのかを考えていきます。
リソース配分|スケジュール、コスト
調査方法と情報の取得先が決まったら、それらを誰がいつまでに進めていくかを決めます。
実際に調査を進めていくと、いくらでも情報は出てきてしまい、時間をかけようと思ったらいくらでもかけることが出来ます。
必ず時間を区切って進めるようにしましょう。
複数人で行う場合はWBS(Work Break-down Structure)に落とすのも有効です。
マーケティングリサーチ手順③調査&検証
ここでようやく実際の調査を行います。ここでは調査の実施時に気をつけるべきポイントを3つご紹介します。
- 色々な情報を見る時の注意点
- 作業効率を上げるための注意点
- 次の分析&考察を楽に進めるための注意点
常に問いを持って情報にあたる
何か情報を探す時やヒアリングを行う際は何を明らかにしたいのかを常に問いとして持っておくようにしましょう。
何となく調査してしまうとその場の感覚でいい情報な気がしてメモしてしまいますが、後にまとめ上げる際に必要なくなってしまう場合が多いです。
時間配分に気を付ける
実際に調査うすると、知らないことが多すぎてあれもこれも調べたくなってしまいます。
しかし、限られた時間の中で必要なことだけ調べる時間配分を必ず意識するようにしましょう。
当然どの分野にもその領域を積み上げてきた専門家がいます。そして、1回の調査でその専門家と同じレベルになるのは無理です。何となく不安だから全部知っておきたいというのは専門家になろうというのと同じです。
限られた時間だからこそ徹底的に絞り込んだ一点に対して深い情報を得るような調査を行うようにしましょう。
集計やまとめを並行で行なっていくと楽
「常に問いを持って情報にあたる」と繋がりますが、必要だと思った情報に関してはカテゴリ分けしながらアウトプットに使える文章や図になおしておくと楽です。
具体的な問いや調べるべき内容に対して、アウトプットの形式になおしておくと、最後はそれらを組み合わせて一連の流れにするだけで済みます。
マーケティングリサーチ手順④分析&考察
最後に分析をして推測出来ることは何か考察していきます。そのためのテクニックを3つご紹介していきます。
- 2つの指標を掛け合わせる|クロス集計
- グラフ化して傾向を知る
- 無駄な部分をそぎ落とす
2つの指標を掛け合わせる|クロス集計
まずはそれぞれの指標をかけ合わせていきます。
2つの指標を掛け合わせたときにどんな意味を持つかを考えて掛け合わせを行います。
グラフ化して傾向を知る
まずはグラフ化して傾向の把握をします。
2軸の掛け合わせた時に特徴や傾向としてどんなことが言えるかを考察していきます。
無駄な部分をそぎ落とす
最後にグラフや表で無駄な部分をそぎ落としていきます。相手は初見で全てを判断する必要が出てくるので見てほしい情報以外を消していきましょう。
マーケティングリサーチで失敗しやすいポイント4つ
次に実際にマーケティングリサーチを行う際に失敗しやすいポイント4つをご紹介していきます。
- 目的が不明確
- エビデンスが弱い
- 考察が事実に基づいていない
- 受け手へのメッセージがない
①目的が不明確
「なぜリサーチを行う必要があったのか」「目的は何なのか」が不明確だと次のアクションに繋がりません。
いくら整理されていてもリサーチの結果を読む・聞く人の頭に入っていかなくなってしまいます。必ずなぜ行うのかを明確に言えるようにしましょう。
②エビデンスが弱い
エビデンスが弱いとリサーチの説得力にかけてしまいます。情報の取得方法や出典元には気を配りましょう。実体験ベースの一次情報が最も信頼度が高く、他人の情報である二次情報の中でも公的機関などが出している情報は信頼度が高いです。
反対にSNSからの情報が有効な場合もあります。
なぜそのエビデンスなのかを説明できるようにしましょう。
③考察が事実に基づいていない
リサーチを進めていくと自分なりの意見が出てきます。それ自体は悪いことではないのですが、考察が自分の意見になってしまう場合があるので注意が必要です。
あくまで考察は調査結果に対して推測できることであるべきで、ご自身の意見であってはいけません。
④受け手へのメッセージがない
最後にいくらきれいに整理されたマーケティングリサーチだったとしても最終的に言いたいことが不明瞭だと事業の成長に繋がりません。
繰り返しになってしまいますが、マーケティングリサーチは事業のためにあるべきです。
事業のために「何を調べて」「その結果何をすべきなのか」をはっきりさせましょう。
マーケティングリサーチを成功に導くためには
前章でマーケティングリサーチで失敗しやすいポイントをご紹介していきましたが、本章では成功するための方法をご紹介します。
結論から申し上げると「アウトプット資料の構成を先に作る」です。
以下で
- なぜアウトプット資料の構成を先に作るべきなのか
- アウトプット資料を先に作る上でのテクニック
をご紹介していきます。
なぜアウトプット資料の構成を先に作るべきなのか
なぜアウトプット資料の構成を先に作るべきなのでしょうか。これには以下の2つの理由があります。
- 作業の効率がおちるから
- 調査の目的が達成出来ないから
それぞれ順にご説明していきます。
作業の効率がおちるから
アウトプット資料の構成を作ると全体の流れが定義されます。「なぜこの作業をするのか」「この作業の目的が何なのか」が明確になります。
マーケティングリサーチをすると膨大な情報を調べますので、必ず取捨選択をする必要があります。
その時に構成がしっかりしていると情報の取捨選択を自分で素早く判断することが出来ます。
マーケティングリサーチの目的が達成出来ないから
マーケティングリサーチの目的は1章でご説明したように「事業の判断をすること」です。
そのために必ず誰かにリサーチの結果を伝え、アクションをしてもらう必要があります。
そしてアウトプット資料の構成を作ることで「誰に何を伝えたいのか」が明確になります。
本項の内容は外資系コンサルの必読書と言われている「仮説思考」という本にも出てきますので気になる方は是非読んでみてください。
アウトプット資料を先に作る上でのテクニック
次にアウトプット資料を作る上でのテクニックをご紹介します。以下の3点でご説明していきます。
- 構成を作るときのツール
- 構成の見直し方法
- 構成を作る上でのコツ
Power Pointを用いた構成の作成方法
タイトルとコンテンツのスライドを作成し、「Tab」と「Shift+Tab」で段落構成を作ります。
「ホーム」→「新しいスライド」→「タイトルとコンテンツ」でスライド作成し、本文部分で構成を作りこんでいきます。
Power Pointを使うメリットは、構成が多くなっても1スライドで収まるところです。文量に応じて文字サイズが変わるので1スライドで構成を一覧出来ます。
突っ込まれるポイントを考える
客観的に見て突っ込まれる可能性がありそうな部分をコメントで追加していきます。
もちろん直接直してしまってもよいのですが、実際にやってみた感想としては、そもそもの流れがずれている場合が多かったので一旦コメントなどで可視化してしまったほうが良かったです。
局所的に修正していくよりは全体で共通の問題を明らかにして、全体を修正していったほうが成功します。
「入れておいたほうが良いかな」という情報はいれない
情報は可能な限りそぎ落としましょう。調査に苦労するほど頑張ったことを入れたくなってしまうのですが、構成の流れとずれている情報は受け手に負荷を与えるのでマイナスです。勇気を持って情報を削りましょう。反対に、構成の流れに沿っている箇所は強調して一目で分かるようにしておきましょう。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。本記事の結論をまとめますので、不明点等は再度お読みいただき完璧に理解していただければ幸いです。
- マーケティングリサーチは事業の成長ためにある
- マーケティングリサーチは常にマーケティング課題のために行う
- マーケティングリサーチを成功させるためにはアウトプット資料の構成をしっかりと作ることが大切