バックオフィスの効率化の手段は、数多くありますが、どれが自社に合うのかを見極めるのは簡単ではありません。
この記事では、3つの質問をします。
答えるだけで、まず検討すべき効率化手段の当たりがつきます。
新規採用で解決しづらい今だからこそ、最適な打ち手を見つけて効率化を成功させましょう。
【この記事で扱うバックオフィス業務の範囲】
- 経理・財務(記帳、経費精算、請求書発行、支払処理、決算業務)
- 人事・労務(勤怠管理、給与計算、社会保険手続き、入退社手続き)
- 総務(備品管理、契約書管理、社内問い合わせ対応、ファシリティ管理)
- 法務(契約書レビュー、コンプライアンス対応、稟議承認)
- 情報システム(アカウント管理、IT資産管理、ヘルプデスク対応)
3つの質問であなたに最適なバックオフィス効率化手段を見極める
効率化を始める前に、まず自社の業務特性を把握しましょう。
まつ特に面倒だと感じている業務や作業を1つ思い浮かべ、以下の質問にご回答ください
質問1:その作業はどこで行われていますか?
以下から1つ選んでください。
A. 1つのツール内で完結している(Excel、Googleスプレッドシート、会計ソフトなど単一のツール内)
B. 複数のツールをまたいでいる(データをコピーして別のツールに貼り付けるなど)
C. 人との対話・やり取りが中心(メールのやり取り、電話対応、交渉など)
回答別の次のステップ
- Aを選んだ方 → 質問2へ
- Bを選んだ方 → 質問3へ
- Cを選んだ方 → 最適な手段:生成AI/AIアシスタント または 外注(BPO)
Cを選んだ方への補足
人との対話・やり取りが中心の業務は、以下の2つから選びます。
生成AI/AIアシスタントが向く場合
- 定型的な問い合わせ対応(FAQベース)
- メールの下書き作成や要約
- 議事録の作成や整理
- 社内向けの簡易的な対応
外注(BPO)が向く場合
- 専門知識が必要(税務相談、法務相談など)
- 人間的な判断や交渉が必要
- 機密性が高く、AIに任せられない
- 長期的に安定した運用が必要
詳細は後半の「バックオフィス効率化の手段7つ」のセクションで解説します。
質問2:(質問1でAを選んだ方)その作業はルール化できますか?
以下から1つ選んでください。
A. 完全にルール化できる(手順をマニュアル化できる、毎回同じ処理)
B. 大まかなルールはあるが、判断が必要(ケースバイケースで処理が変わる)
C. 専門知識が必要で、社内にスキルがない(税務処理、法務チェックなど)
回答別の最適な手段
- Aを選んだ方 → 既存ツールの機能を使った自動化 または SaaS置き換え
- Bを選んだ方 → 生成AI/AIアシスタント
- Cを選んだ方 → 外注(BPO)
Aを選んだ方への補足:既存ツール自動化 vs SaaS置き換え
既存ツールの機能を使った自動化が向く場合
- 現在使っているツールに自動化機能がある(Excel関数、マクロ、GASなど)
- 追加コストをかけたくない
- 社内に該当ツールのスキルを持つ人がいる
SaaS置き換えが向く場合
- 社外の人とデータを共有する必要がある(取引先、従業員など)
- 監査ログや承認フローが必須
- 法改正に自動対応したい
- リモートワークやモバイル対応が必要
詳細は後半の「バックオフィス効率化の手段7つ」のセクションで解説します。
質問3:(質問1でBを選んだ方)ツール間はどう接続できますか?
以下から1つ選んでください。
A. API連携が可能(ツールがAPI連携に対応している、またはiPaaSなどで連携できる)
B. API連携できない(レガシーシステム、社内独自システムなど)
C. そもそも業務プロセスごと変えたい(今のツールや仕組みに不満がある)
回答別の最適な手段
- Aを選んだ方 → オーケストレーション(連携+フロー制御)
- Bを選んだ方 → RPA(画面操作自動化)
- Cを選んだ方 → SaaS置き換え
それぞれの手段の違い
オーケストレーション(連携+フロー制御)
iPaaS(Zapier、Make、n8nなど)やワークフローシステムを使って、複数のツールを自動連携します。API経由でデータをやり取りするため安定性が高く、承認フローや業務プロセスの可視化も可能です。
RPA(画面操作自動化)
人がパソコンで行う画面操作(クリック、入力、コピペ)をロボットが再現します。APIがないシステムでも自動化できますが、画面変更に弱いという特性があります。
SaaS置き換え
複数のツールをまたぐ業務を、1つのSaaSで完結させます。業務プロセスごと最適化でき、監査ログや承認フロー、社外共有も標準装備されています。
バックオフィス効率化の手段7つ:診断結果から選ぶ詳細ガイド
ここからは、診断で導き出された各手段を詳しく解説します。
向く条件・向かない条件・失敗回避のポイントを押さえて、最適な選択をしましょう。
既存ツールの機能を使った自動化
ExcelやGoogleスプレッドシートの関数・マクロ、Google Apps Script(GAS)、Salesforceのワークフロー機能など、すでに使っているツールに備わっている自動化機能を活用する手段です。



今使っているツールに備え付けの機能を認知して使いこなすだけでもかなり作業が楽になります。
何よりお金をかけずに効率化できるので、もし未着手であれば真っ先に確認したいところ。
向く条件
- 既存ツール内で完結する業務(他ツールとの連携が少ない)
- 関数やマクロで処理できる定型計算やデータ加工
- 社内に該当ツールのスキルを持つ人がいる
- 追加コストをかけずに効率化したい
向かない条件
- 複数の外部ツールとデータ連携が必要
- 既存ツールに自動化機能がない、または機能が不足している
- 保守できる人がおらず、属人化リスクが高い
- 大量データの処理でツールの処理速度が限界
失敗回避のポイント
- 作成者以外でも保守できるよう、コメントやドキュメントを残す
- マクロやスクリプトは定期的に動作確認し、ツールのバージョンアップに対応する
- 処理が複雑化しすぎた場合は、SaaSへの移行を検討する
- セキュリティリスク(マクロの悪用など)に注意し、実行権限を制限する
SaaS置き換え
会計ソフト、経費精算システム、勤怠管理システム、契約管理システムなど、特定業務に特化したクラウドSaaSで既存の仕組みを置き換える手段です。
向く条件
- 業務プロセスが業界標準に近い(カスタマイズ不要)
- 社外との情報共有が必要(取引先、従業員、外部専門家)
- 法改正やルール変更に自動対応したい
- 監査ログや承認フローが必須
- リモートワークやモバイル対応が必要
向かない条件
- 業務プロセスが特殊で、SaaSの標準機能では対応できない
- 既存システムとの連携が複雑で、データ移行コストが高い
- 月額費用が継続的に発生するため、小規模では費用対効果が低い
- オンプレミスでのデータ管理が必須(クラウド利用不可)
失敗回避のポイント
- 導入前に無料トライアルで業務フローとの適合性を確認する
- データ移行計画を立て、移行期間中の二重運用コストを想定する
- 他ツールとの連携が必要な場合、API連携やオーケストレーションツールの利用を検討する
- ベンダーのサポート体制(日本語対応、レスポンス速度)を確認する
- 契約更新時の価格改定リスクを考慮し、複数年契約の条件を確認する
オーケストレーション(連携+フロー制御)
iPaaS(Integration Platform as a Service)、ワークフローシステム、BPM(Business Process Management)ツールなど、複数のツールやシステムをつなぎ、業務フローを自動制御する仕組みです。
連携寄りのオーケストレーション
Zapier、Make、n8nなどのiPaaSツールが該当します。異なるSaaS間でデータを自動連携させることに特化しています。
例:Googleフォームで受け付けた問い合わせを、自動的にSlackに通知し、Notionのデータベースに記録する
統制寄りのオーケストレーション
ワークフローシステムやBPMツールが該当します。承認フロー、稟議、申請業務など、複数の人や部署を経由する業務プロセスを統制・可視化します。
例:経費精算の申請→上長承認→経理確認→支払処理までの一連のフローを自動化し、進捗状況を可視化する
向く条件
- 複数のSaaSやシステムを横断する業務が多い
- 承認フローや稟議など、複数の関係者が関わる業務
- データの転記やコピペが頻発している
- 業務の進捗状況を可視化したい
- API連携が可能なツールを使っている
向かない条件
- 使用しているツールがAPI連携に対応していない
- 業務フローが頻繁に変わり、設定変更の手間がかかる
- 単一ツール内で完結する業務(既存ツールの機能で十分)
- 連携するツール数が少なく、費用対効果が低い
失敗回避のポイント
- 連携するツール間のデータ形式や仕様の違いを事前に確認する
- APIの利用制限(レートリミット)を把握し、大量データ処理時の対策を立てる
- フローが複雑化しすぎないよう、シンプルな設計を心がける
- エラー発生時の通知設定と例外処理の仕組みを必ず用意する
- 運用メンテナンス担当者を決め、API仕様変更への対応体制を整える
RPA(画面操作自動化)
Robotic Process Automation(RPA)は、人がパソコン上で行うマウス操作やキーボード入力を記録し、ソフトウェアロボットに再現させる技術です。
向く条件
- API連携ができないレガシーシステムや社内システムを使っている
- 定型的な画面操作(ログイン、データ入力、ダウンロード、コピペ)が多い
- 複数のシステム間でデータを転記する作業が頻発
- 夜間・早朝などの非営業時間に処理を実行したい
- プログラミング知識がなくても自動化を進めたい
向かない条件
- 画面デザインやレイアウトが頻繁に変わるシステム
- 例外処理や判断が多く、ルール化できない業務
- API連携が可能なツール同士の連携(オーケストレーションの方が安定)
- リアルタイム処理が必要な業務(RPAは基本的にバッチ処理)
失敗回避のポイント
- 画面変更に強い設定方法(座標指定ではなく要素指定)を使う
- エラー発生時の復旧手順とアラート通知を必ず設定する
- ロボットの実行権限を最小限に制限し、誤操作リスクを減らす
- 定期的な動作確認とメンテナンスのスケジュールを組む
- RPAで対応する業務の範囲を明確にし、無理に拡張しない
生成AI/AIアシスタント(曖昧さ処理)
ChatGPT、Claude、Geminiなどの生成AIや、専用のAIアシスタントを活用して、ルールが曖昧な業務や非構造化データの処理を効率化する手段です。
向く条件
- ルールが曖昧で、人の判断が必要な業務(文書の要約、分類、校正、質問応答)
- 非構造化データの処理(メール、議事録、手書きメモ、画像からのテキスト抽出)
- 対話を通じて品質を上げられる業務(文章作成、提案書作成、問い合わせ対応)
- 少量データでも効果が出る業務(データ蓄積不要)
- 柔軟な出力形式が求められる業務
向かない条件
- 厳密な再現性が必要な業務(同じ入力で必ず同じ出力を求める)
- 法令や契約に基づく判断が必要で、誤りが許されない業務(最終確認は人が必須)
- リアルタイム処理が必須で、AIの応答速度が遅い
- 完全な監査ログが必要な業務(生成AIの判断根拠が不透明)
- 機密情報を含むデータ(外部API利用時の情報漏洩リスク)
失敗回避のポイント
- 生成AIの出力は必ず人が最終確認する運用フローを設計する
- 機密情報を扱う場合は、社内環境で動作するAIや契約条件を確認する
- プロンプト(指示文)の品質が結果に直結するため、テンプレート化して標準化する
- 誤った情報を生成するリスク(ハルシネーション)を理解し、ファクトチェック体制を整える
- 生成AIで処理する業務範囲を明確にし、人の判断が必要な箇所を設計時に決める
外注(BPO)
Business Process Outsourcing(BPO)として、バックオフィス業務の一部または全部を外部の専門業者に委託する手段です。
向く条件
- 社内にリソースやスキルがなく、採用も難しい
- 月次や年次など、繁忙期が限定的で一時的に人手が必要
- 専門知識が必要な業務(税務、社会保険手続き、法務)
- 業務を社内で抱えず、運用まで丸ごと任せたい
- 自動化よりも人の柔軟な対応が必要
向かない条件
- 機密性が高く、社外に出せない情報を扱う業務
- リアルタイムでの社内連携が頻繁に必要
- 外注コストが社内対応より高くなる
- 業務が頻繁に変わり、外注先への指示コストが高い
- 自社にノウハウを蓄積したい業務
失敗回避のポイント
- 業務範囲と責任範囲を契約書で明確にする
- 機密保持契約(NDA)とセキュリティ体制を確認する
- 定期的な品質チェックと報告体制を設ける
- 外注先が突然撤退した場合の引き継ぎ計画を用意する
- 自社側の窓口担当者を決め、コミュニケーションコストを最小化する
AI-OCR(定型帳票向け)
AI-OCRは、紙やPDFの帳票から文字を読み取り、データ化する技術です。請求書、領収書、申込書など、定型フォーマットの書類処理に特化しています。
向く条件
- 大量の紙帳票やPDFを定期的に処理している
- 帳票のフォーマットがある程度統一されている
- データ入力作業が業務の大半を占めている
- 経費精算や請求書処理の自動化を進めたい
向かない条件
- 帳票の種類やフォーマットがバラバラで、学習コストが高い
- 処理する帳票の枚数が少ない(月数十枚程度)
- 手書き文字が多く、認識精度が低い
小規模なら生成AI画像認識で代替できる場合も
月に数十枚程度の帳票処理であれば、ChatGPTやClaudeなどの生成AIに画像をアップロードし、必要な情報を抽出する方法も検討できます。専用のAI-OCRツールを導入するよりも初期コストを抑えられますが、大量処理には向きません。
失敗回避のポイント
- OCRの認識精度を事前にテストし、誤認識率を確認する
- 認識結果を人が確認する運用フロー(目視チェック)を必ず設ける
- 帳票フォーマットが変わった場合の再学習コストを想定する
- 読み取ったデータの保管場所と保管期間を明確にする
まとめ
バックオフィス効率化は、手段が多すぎて迷いがちですが、3つの質問で自社の業務特性を把握すれば、最適な手段を選べます。
以下3つの軸で判断することで、7つの手段から最適解を導き出せます。
- 作業の範囲(1つのツール vs 複数ツール vs 人との対話)
- ルールの明確さ(ルール化できる vs 判断必要 vs 専門知識必要)
- 連携可能性(API連携可 vs 不可 vs プロセスごと変更)
各手段には向く条件・向かない条件があります。診断結果を参考に、失敗回避のポイントを押さえながら、自社に合った効率化を進めましょう。









