アイディアには唯一の正解はありません。
そしてどんな状況からでもアイディアは出すことができます。
だけど「何かいいアイディアない?」と聞かれてぱっと出てこないこともご経験ありますよね?
そこで今回はブレストの生みの親が作ったアイディアを出すフレームワーク『オズボーンのチェックリスト』をご紹介します。
オズボーンのチェックリストとは
オズボーンのチェックリストとは『ブレインストーミング』の名付け親であるアレックス・F・オズボーン氏が考案した発想法のフレームワークです。
元々、広告代理店BDOを設立し、合併後はBBDOの取締役を務めたオズボーン氏が自社の会議の中で使っていたブレインストーミングを著書『How To Think Up』で紹介したことが今の”ブレスト”の始まりです。
BBDO:世界81カ国289拠点で活動する世界トップクラスの広告・マーケティング会社。カンヌ・ライオンズでは年間最優秀ネットワークに5回選出、The Directory Big Wonでは6年連続、The Gunn Reportでは8年連続で選出され、世界で最もクリエイティブなエージェンシー・ネットワークと評されています(NETWORK | I&S BBDO )。
そんな発想法の権威とも呼べるオズボーン氏が、自身の経験から9つの質問をすることで加速的にアイディアが生まれると作り出したフレームワークが”オズボーンのチェックリスト”です。
アイディアに行き詰まった時はぜひ自身のこの9つの質問をぶつけてみてください。
◆オズボーンのチェックリストの9つの質問
それではこれからオズボーンのチェックリストの9つの質問をご紹介します。アイディアに詰まった時にこれらの質問を自分に投げかけてみることで新たな視点からのアイディアが出やすくなります。
<オズボーンのチェックリストの9つの質問>
- 転用|他の業界へ転用できないか?
- 応用|他の業界からアイディアを応用できないか?
- 変更|形や機能を変更したらどうか?
- 拡大|大胆に大きくしたらどうか?
- 縮小|大胆に小さくしたらどうか?
- 代用|他のもので代用できないか?
- 置換|順番などを入れ替えられないか?
- 逆転|特徴を逆転させてみたらどうか?
- 結合|複数のアイディアを組み合わせられないか?
転用|他の業界へ転用できないか?
「他の業界や分野で使い道はないか?」
すでにある商品をそのままで他に活躍できる分野や領域はないかを問うてみましょう。
既存の商品の売れ行きが悪い場合には、もしかすると他の業界・領域に”転用”することで新たな価値を生み出すかもしれません。
応用|他の業界からアイディアを応用できないか?
「他の業種や分野からアイデアが借りられないか?」
他の業界では当たり前のことが、自身の業界ではイノベーションになる場合もあります。慣習や構造、用語など業界に限定されている知識は意外と多いです。
業界を調べつくしても解決策が出なかった場合には他業界に目を向けてみてはいかがでしょうか。
変更|形や機能を変更したらどうか?
「形や機能を変えてみたらどうか?」
業界の競合が共通の特徴を備えている場合、その特徴を変更してみると新たな市場が開拓されるかの制があります。
具体的には以下のようなものを変更できないでしょうか。
- 形
- 機能
- 色
- 音
- におい
- 意味
- 動きなど
拡大|大胆に大きくしたらどうか?
「大胆に大きくしてみたらどうか?」
業界標準から大胆に大きくしてみることで新たな顧客を開拓できないか?を考えてみましょう。
具体的には以下のようなものです。
- 時間を増やす
- 頻度を増やす
- 高さを大きくする
- 長くする
- 強度を増すなど
ポイントは”大胆”に大きくすることです。少しの違いでは新たな価値にはなりません。大幅に変更したときにどうなるかを本気で考えることが大切です。
縮小|大胆に小さくしたらどうか?
「大胆に小さくしてみたらどうか?」
業界標準から大胆に小さくすることで新たな顧客を開拓できないか?を考えてみましょう。
具体的には以下のようなものです。
- 携帯化できないか
- 短くできないか
- 軽量化できないか
- 手順を省略できないか
代用|他のもので代用できないか?
「他のもので代用できないか?」
コストや時間を下げられる代用方法or価値・価格を上げられる代用品はないだろうか。
価格破壊を起こすようなイノベーションは少なからず代用に当てはまる場合も多い。
同じ目的を達成できる手段で今までのものを代用できるものはないだろうか。
具体的には以下のようなものを代用できないでしょうか。
- 材料
- 過程
- 場所
- アプローチ
- ヒト
- 成分など
置換|順番などを入れ替えられないか?
「順番などを入れ替えてみたらどうか?」
要素、成分、部品、パターン、配列、レイアウト、位置、ペース、スケジュールを変えられないか? 原因と結果を替えられないか?
逆転|特徴を逆転させてみたらどうか?
「逆にしてみたらどうか?」
従来当たり前になっていた特徴を正反対にできないでしょうか。
具体的には以下のような問となります。
- 弱点と考えられていたものを強みに変えられないか
- 順番を逆に出来ないか
- 役割を逆にできないか
結合|複数のアイディアを組み合わせられないか?
「組み合わせてみたらどうか?」
組み合わせることで新たな価値を作り出したり、1人の顧客に複数の価値を提供できないでしょうか。
具体的には以下のようなものを結合させてみましょう。
- 目的
- 考え
- 機能
- 役割
- 一単位を複数にできないか?
オズボーンのチェックリストの事例
ここからはオズボーンのチェックリストを元にした事業や商品の事例をご紹介していきます。
- 転用の事例|富士フィルム、飛行機
- 応用の事例|○aaS、ガチャ
- 変更の事例|野菜二郎、TOYOTA生産方式
- 拡大の事例|コストコ、食べ放題
- 縮小の事例|QBハウス、LCC
- 代用の事例|こんにゃく麺、フレキシブルディスプレイ
- 置換の事例|ネット広告、冷しゃぶ
- 逆転の事例|西武園ゆうえんち、セルフサービス居酒屋
- 結合の事例|カフェ×家具、カレーうどん
転用の事例|富士フィルム、飛行機
まず転用の事例です。転用は技術を活かす事例が有名です。
富士フィルム
非常に有名な事業転換の事例として富士フィルムがあります。
名前の通り元々、写真フィルムを製造していた富士フィルムが2000年以降、売上が減少傾向にあり、写真フィルムの技術と化粧品の技術が似ていることを発見し大きな転換を果たしました。
反対に写真業界でトップを走っていたコダック社は方向転換出来ずに破綻してしまった。
転用は行き詰まった場合に非常に有効な方法であることが分かります。
飛行機
今では世界中を飛び回っている飛行機ですが、元々は翼の設計がうまく悩んでいました。その時にタカやワシやコウノトリの羽の先端が上を向いているのを発見し、翼を改良したところ乱気流による空気抵抗を緩和することに成功しました。
応用の事例|サブスクリプション、ガチャ
2つ目は応用の事例です。応用は他業界の常識を持ち込むことでイノベーションを起こした事例を2つ紹介します。
サブスクリプション
ソフトウェア、動画、健康食品…etc
今ではありとあらゆる業界でサブスクリプション(定額課金)制になっています。
これらは元々は雑誌の定期購読が始まりでした。これらをインターネットなどの新しい業界で導入したことにより、今まで売り切り型で収支予想が不透明だったのが、ある程度予想が立つようになりました。
またそれと並行してXaaSとしてサービス化の動きがありますね。
- SaaS:Softwear as a Service(サービスとしてのソフトウェア)
- MaaS:Mobility as a Servie(サービスとしての移動手段)
- PaaS:Platform as a Platform(サービスとしてのプラットフォーム)
”所有”から”利用”、そして定額課金へという動きが進んでいます。
ガチャ
スマホゲームで当たり前の”ガチャ”ですが、元のアイディアはパチンコなどのギャンブルですよね。
なぜかというとプレステやゲームキューブなどのそれまでのテレビゲームにそういった要素はなかったですよね?
これによりゲームの強烈なファンがたくさん課金してより楽しめるという、今までのソフトの本体価格だけの仕組からファンドに応じた値段という仕組みに変わりました。
変更の事例|野菜二郎、TOYOTA生産方式
3つ目は変更の事例です。変更は商品開発と生産の2つをご紹介します。
野菜二郎
これに関しては完全に趣味が出てますが、二郎系肉野菜炒め専門店『ベジ郎』は今までのラーメンという素材を変更して肉野菜炒めにしたものです。
これにより二郎の罪悪感を緩和しつつ二郎の味を楽しめる商品になっています。
早めに行こうと思っています。
TOYOTA生産方式
2021年時点でも世界シェアNo.1のTOYOTA。
そのTOYOTAの大きな強さの1つがTOYOTA生産方式です。
トヨタ自動車工業の元副社長である大野耐一さんが開発し、今なお世界的に使われているTOYOTA生産方式ですが、実はスーパーマーケットの仕組みを利用していることはご存じでしょうか。
元々、トヨタ自動車創業者の豊田喜一郎さんが考えた「ジャストインタイム」をスーパーマーケットの仕組みにアイディアを受けて大野さんが完成させたのがTOYOTA生産方式です。
拡大の事例|コストコ、食べ放題
4つ目は拡大の事例です。拡大は小売りと飲食に関する事例を紹介します。
コストコ
みなさんはコストコに行ったことはありますか?倉庫型の店内に大容量の商品が並んでいる、見ているだけでも楽しいお店です。
まさに1個当たりの容量を拡大することで新たな価値を作ったお店ですね。
またコストコがすごいのは、会員制になっておりサブスクも両立している点です。
実は利益の大きな割合を占める会員費により、コロナなどの外的要因によらず安定した収益を上げているのがコストコです。
食べ放題
次に焼肉食べ放題・アルコール飲み放題・動画見放題…etc
量的な制限をなくす拡大により成功した事例は多いです。
ポイントは〇〇放題にすることにより、お得だと感じさせることです。
ただしビジネスとして成立している以上、利益が出ていることも忘れてはなりません。
食べ放題や飲み放題は複数人で行くことが多いため、トータルで見ると十分な利益が出ていたり、動画見放題なら見ていない月もありますよね。
このように一見お客さんの得に見えるものをし放題にすることで顧客を呼び込む方法も有効です。
縮小の事例|QBハウス、LCC
5つ目は縮小の事例です。限定することで低価格を実現した2つの事例を紹介します。
QBハウス
QBハウスは10分1000円の理容店です。
メニューはヘアカットのみ、顔剃り・シャンプー・ブローは行いません。
時間を10分に縮小するためにメニューを減らし、サービス内容を減らし、価格も下げました。
LCC
LCCとは格安航空会社(LCC:Low-cost carrier)のことであり、一般的な航空会社と比べると圧倒的に低価格でサービスを提供しています。
LCCの中でも有名なサウスウエスト航空の例をご紹介すると、低価格を実現するために「座席指定がなく先着順」「機内食がない」「清掃員がいない」といった業界では異端とされる新たな形を作りました。
QBハウスもLCCも「時間を圧倒的に短くする」「圧倒的な低価格を実現する」ことを本気で考えたことから様々な常識を打ち破るオペレーションを発送したのだと想像できます。
代用の事例|こんにゃく麺、フレキシブルディスプレイ
6つ目は代用の事例です。代用は飲食と家電の2つの事例をご紹介します。
こんにゃく麺
一つ目は小麦の麺をこんにゃく麺にすることでダイエットしながらおいしいものを食べたいユーザーを取り込んだ事例です。
今ではまとめサイトがあるくらい浸透しているこんにゃく麺ですが、まさに代用したことでうまく言った例ではないでしょうか。
フレキシブルディスプレイ
学生時代にセルロースナノファイバーの研究をしていた時に期待されていたのが、セルロースナノファイバーを用いたフレキシブルディスプレイでした。
調べてみたところ今も研究は進んでいるようです。
このように材料開発は代用の事例にあふれています。
置換の事例|ネット広告、冷しゃぶ
7つ目は置換の事例です。ITと飲食の2つの事例を紹介します。
ネット広告
置換とは従来の順番などを入れ替えることです。
そして置換の事例には、ネット広告があります。
当たり前すぎて「?」となるかも知れませんが、今までの広告というのは広告枠を月いくらで買うかという方法でした。
それがテクノロジーの発達で誰がいくら使ったかを計測できるようになり、使った分だけ支払う従量課金型になりました。
今ではAPIなどインターネットの業界では広く使われる方法となりました。
冷しゃぶ
2つ目は冷しゃぶです。温度を入れ替えることで夏の暑い日にも美味しく食べられるようになりました。
逆転の事例|西武園ゆうえんち、セルフサービス居酒屋
8つ目は逆転の事例です。逆転はサービスに関する2つの事例を紹介します。
西武園ゆうえんち
西武園ゆうえんちは東京と埼玉の県境にある遊園地であり、USJを立て直したマーケターとして有名な盛岡剛さんが生まれ変わらせたモノの一つです。
建物が古いことを生かしてALWAYS 3丁目の夕日のようなノスタルジックな世界観を作り出し、人気となりました。
セルフサービス居酒屋
2つ目はセルフサービスです。
店員さんがやるのが当たり前になっていた飲み物の注文やサーブをセルフサービスにすることで人件費を節約しながら、お客さんにとっても次何飲もうと楽しめる仕組みにしました。
結合の事例|カフェ×家具、カレーうどん
9つ目は結合の事例です。結合は小売りと飲食の事例をご紹介します。
カフェ×家具
1つ目はカフェ×家具の組み合わせです。
カフェに置いてある家具を購入可能にすることで家具屋に足を運びにくい人にも家具に興味を持ってもらう機会を作りました。
カレーうどん
最後はカレーうどんです。カレーとうどんを混み合わせることであんなに美味しくなると誰が想像したでしょうか。
まとめ
今回はアイディアの発想法の中でも非常に有名なオズボーンのチェックリストをご紹介しました。
アイディアは論理的に考え尽くして、行き詰まりを感じた時にも新たな解決策を提示してくれます。
さらにその解決策に制限はありません。数も方向も自由です。
事業やビジネスに新たな視点をくれるオズボーンのチェックリストをぜひ使ってみてください。
ほかの発想法も随時紹介していきます。
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