この記事では新規事業開発を行う上で必要な多岐にわたる戦略(営業やマーケティング、プロモーション、ブランディングなど)の土台となるストーリーの作り方について説明していきます。
ストーリーとは|主人公が目的を達成するまでの道のり
まずはストーリーが何かについて説明していきます。ストーリーとはある人物が何かの目的を達成するまでの道のりを描いたコンテンツのことを指します。この時のある人物が主人公であり、主人公は必ず壁にぶち当たります。この障害をいかに乗り越えるかでストーリーの面白さが決定づけられます。
以降の章でストーリーの型も紹介していますのでこのままご覧ください。
新規事業開発におけるストーリーの重要性
次は新しいビジネスを作る際になぜストーリーが必要なのかを説明していきます。
ロジックだけでは人は動かない|人はストーリーに共感する
ここではストーリーに人はどんな影響を受けるのかを説明します。
・覚えてもらいやすい
まずストーリーは人の記憶に残りやすいです。スタンフォード大学の研究によると、数値や単語の記憶より、ストーリーの記憶の方が22倍も記憶に残りやすいという結果が出ています。皆さんも子供のころに見たのにストーリーが面白くて覚えているCM等があるのではないでしょうか。それくらいストーリーには記憶させる力があります。ご自身のビジネスに用いると顧客への認知に非常に効果を発揮します。(Harnessing the Power of Stories)
・幸せホルモン「オキシトシン」が出る
また人は良いストーリーに触れると幸せホルモンが出ます。ブランディング施策、自社事業へのファン化の施策としてこんなに有効な方法はあるでしょうか。そして自社に対してブランド価値を感じてもらえれば、過酷な価格競争とコスト削減をせずに差別化することができます。
オキシトシン測定実験
The Psychology of Storytelling and Empathy, Animated
・理解度が深まる
そして最後にストーリーは理解度を深めます。なぜかといいますと、自分と重ね合わせることができるからです。ロジックで説明するだけでは伝わり切らないイメージや雰囲気までストーリーで伝えることができます。(参考文献:完成商品開発における商品デザインと感性価値の考察)
ストーリーの作り方
ストーリーの意味を説明させていただいたので、実際のストーリーの作り方を説明します。
ここで注意してほしいのがいきなりシナリオを書き始めてはいけないということです。
ビジネスで使用する場合は、まず一般的なマーケティング戦略を立てたうえで、ストーリーのゴール等をしっかり定義する必要があります。この準備段階を飛ばしてしますと、自身が期待する効果を発揮できません。
まず一般的なマーケティング戦略を定義|顧客、課題、打ち手
まずは一般的なマーケティング戦略を立てます。これがなければ誰にどんなメッセージを伝えればよいかがぶれてしまいます。詳細はマーケティングプロセスの記事で説明していますが、最低限、以下の項目を定義しておく必要があるでしょう。
- 顧客|ペルソナ設定
- 課題|顧客が対象のビジネス周辺で抱えている課題
- 打ち手|それに対して自社が提供できる解決策
顧客|ペルソナ設定
想定されるお客様の人となりを詳細に想像して定義していきます。年齢や性別、どこに住んでいて、どんなものが好きかなどを定義していきます。(「ペルソナ設定」って何?顧客ターゲットを絞りこむ3つのメリット。)
課題|顧客が対象のビジネス周辺で抱えている課題
想定したペルソナがどんな課題を抱えているかを定義します。実際には課題の分析は非常に難しいですが、このタイミングで一度検討しておかないと人に刺さるストーリーにはなりにくいです。(顧客分析に使える21のフレームワークとは)
打ち手|それに対して自社が提供できる解決策
そしてその課題に対して自社の解決策を提示します。フェーズごとに異なってくるのでカスタマージャーニーマップなどを作ると良いでしょう。
次にストーリーの目的、テーマ、メッセージ、登場順物を定義
顧客の定義ができたら次はそれをストーリーに落としていきます。具体的には
- このストーリーを作る目的
- テーマ
- メッセージ
- 主人公
を設定していきます。それぞれ説明していきます。
このストーリーを作る目的
このストーリーを読んだ人にどうなってほしいのかを定義します。カスタマージャーニーマップのゴールと等しい場合もありますが、ストーリーは認知の施策や拡散の施策としても有効です。
テーマ
次にストーリーのテーマを決めます。そのストーリーの立ち位置と呼んでも良いでしょう。一般的には以下の3つのテーマがよく用いられます。
- なりたい自分を見せる
- 悩みの共感と解決
- とにかく楽しい
1.なりたい自分を見せる
想定したペルソナの理想像を描いてその理想に近づけることを示唆する方法です。高級ブランドなどはこの方法で芸能人を起用します。
2.悩みの共感と解決
あなたと同じ悩みを持っている人がたくさんいます。つらいですよね。。私はこの方法で解決しました。という流れです。健康食品や美容系のサプリなどはこの方法が多いでしょうか。
3.とにかく印象的
印象的で記憶に残るものです。例えばJTのCMは感動系なので、私はよく記憶に残っています。
上記3つのうちで今回はどのテーマを選ぶかを決めます。
主人公
そしてそのテーマにあった主人公を選びます。こちらはペルソナ設定の時のように細かく設定したほうがリアリティがあるでしょう。
またストーリーの主人公は読み手にとって憧れと共感を兼ね備えた人物であることが求められます。
共感で身近に感じてもらい、憧れでなりたいと思ってもらうことができます。
理想をいえば、前項のペルソナと課題と打ち手をストーリーにするのが最も有効
しかし、最初から性格に定義できていることの方が少ないです。そこで実際には
- 最低限の定義を行い
- ストーリーを形にしてその反応を見ながら顧客の定義の修正
- ストーリーのブラッシュアップ
- 動画やLPにして反応を確かめる
を繰り返して行くことが多いです。
ログラインを決める
人物とテーマまで決まったら次に、全体構成とログラインを設定します。ログラインとはストーリーを簡潔に一文で表したものです。ストーリー全体に対するログラインと各場面に対するログラインを作っていきます。
・ログラインは3パターンある
ログラインは誰が何をしたのかを説明する1文です。しかし、実際作ってみると、あまりに簡潔すぎて面白くない場合や複雑に考えすぎてまとまらない場合があります。
そういう時に使いやすいパターンとその例を3つご紹介します。
1.遠いものを組み合わせる
例:誰よりも合理的な敏腕経営者が不合理な決断を下す話
いつも合理的なのになぜ不合理な決断を下したのか興味をひきます。
2.大げさにする
例:人と話したことがない引きこもりが大儲けする話
さすがに誇張し過ぎですね笑
しかし大げさすぎるので目を引くかと思います。
3.ずらす
例:なんの努力もしていないのに気づいたら社長になっていた話
少し遺恨が残りそうですが・・・笑
社長=頑張っているはずという価値をずらしました。
以上のような要素を少し加えてもらえれば面白いログラインが作れるかと思います。
また、この方の記事が非常にわかりやすかったので参考にさせて頂きました。
全体構成を決める
次に全体構成について説明します。以下の3種類がストーリー構成としてよく使用されます。
- 起承転結
- 3幕構成
- ヒーローズジャーニー
どの構成を使用するかを決めてそれぞれの場面にログラインを記述していきましょう。
起承転結
日本ではもっとも有名ではないでしょうか。国語の時間などにさんざん学習したかと思います。しかし、使いこなせているかと問われれば、自信を持ってYESといえる人も少ないのではないでしょうか。ここでしっかり確認していきましょう。
起承転結の内容
起 | 設定の説明+きっかけ物語の設定とストーリーのきっかけを描きます。日常生活と旅に出るきっかけなどでしょうか。 |
承 | 順調な進行や成長きっかけを得た主人公が順調に進んでいく様子を描きます。 |
転 | 転換点そして転で大きく物語の流れが変わります。最大の敵の登場や仲間の裏切りなどでしょうか。 |
結 | しめくくりそして最後に無事に帰ってきた主人公の様子を描いて物語を締めくくります(バッドエンドの場合は逆です)。 |
3幕構成
3幕構成は海外のストーリーでは割と主流なのではないでしょうか。起承転結の承と転を一つとしてカウントしているイメージです。
3幕構成の内容
1幕 | 設定その物語の設定を描きます。 |
2幕 | 対立・衝突主人公がぶつかった壁や対立構造を描きます。 |
3幕 | 解決2幕の対立・衝突が解決していく様を描きます。 |
ヒーローズジャーニー
ハリウッドなどで使用されている構成です。全12項目であり、かなり詳細にストーリーを吟味できます。
ヒーローズジャーニーの項目
1.日常の世界 | 主人公の日常の平穏な日々を描きます |
2.冒険への誘い | 何か冒険へのきっかけとなる出来事が起きます |
3.冒険の拒絶 | 主人公は冒険を一度拒絶します |
4.賢者との出会い | 主人公を諭してくれる人物や出来事と出会い、冒険への準備を行います |
5.第1関門突破 | 危機を乗り越え、本格的な冒険がスタートします |
6.試練、仲間、敵 | ここで仲間や敵が出てきて様々な試練を乗り越えて行きます |
7.最も危険な場所への接近 | 最も危険な場所(ラスボスのいる場所など)に近づいていきます |
8.最大の試練 | 幾多の敵を退けながらとうとうラスボスと対面します |
9.報酬 | ラスボスの危機を退けた主人公は報酬(旅の目的となるもの=姫や宝など)を手にします |
10.帰路 | 一行は故郷へ向かいます |
11.復活 | そうするとラスボスが復活し改めて主人公を狙います |
12.宝を持って帰還 | ラスボスを倒した主人公は無事故郷へ戻ります |
シナリオに落とす
最後に各場面を詳細にイメージできるようにシナリオに落として行きます。シナリオは3つの部分からなります。
- 柱
- ト書
- セリフ
柱|設定
舞台となる場所や時間を記述します。
ト書|セリフと舞台以外の情報
登場人物のプロフィールや行動などを記述します。
セリフ|本当に登場人物が話したことだけを書く
登場人物が話したことを記述します。説明は人物に説明させてはいけません。
まとめとテンプレート
いかがでしたでしょうか。今回はストーリーの作り方をなるべくビジネスで実践できる形で記事にしました。
以下のURLからテンプレートをダウンロードできます。是非ご活用ください。またテンプレートに対するご要望等ございましたらお申し付けください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今回の参考文献をご紹介します。