今回は、中小製造業向けのSaaSで、DXを推進する株式会社LeadX CEO前田将太さんにお話を伺いました。
LeadXでは、一緒に業界を変えていく仲間を募集しています。
まず前編では、元々ロースクールに通っていた前田さんが製造業向けのSaaSの会社を始めるまでについてお話を伺いました。
後編では、中小製造業での見積業務の問題を解決するSaaS『匠フォース』を作っていく事業の内側のお話を伺いました。
法科大学院を休学して起業家の道を選択
Q. 今の事業内容を簡単に説明していただけますか?
町工場の武器となるようなソフトウェアを開発しています。
Q. 元々製造業は慣れ親しんだ世界だったのですか?
いえ、全くそんなことはなく、1年半前にまっさらな状態から踏み込んだという感じでした。元々は弁護士を目指していました。
Q.ご経歴を拝見すると東大法学部~大学院まで行かれてるんですもんね
そうですね。東大法学部、ロースクール、休学して、中退して、という流れです。
Q. 法学系の大学院だと周りの方々はどういった職に就くものなのですか?
院はロースクールだったので、弁護士、検察官、裁判官となるような方しかいない感じでした。
Q. そこからビジネスへの道へ進んでいくことになるわけですが、どんなことがきっかけですか?
大学院で受けた『アントレ道場』という、アントレプレナー(起業家)になるための授業がきっかけでした。
本来は工学部の授業となるのですが、文系も参加可能ということで、学部時代の体育会ラクロス部の仲間と「何か面白そうだから」参加したというきっかけでした。
Q. それは元々ビジネスに興味があったというのか、そこではじめて興味を持ったという感じですか?
本当に面白そうだけでした笑
恥ずかしながら、それまでスタートアップやベンチャーといった環境で、社会の課題解決するという選択肢があるというのがイメージできていませんでした。私自身の人生の中でもそういった選択肢があると気づいたのが、大学院に入って、この授業を受けてからでした。それまでは自分で事業を起こそうとかは、選択肢として考えたことがありませんでした。
Q. そこからアントレ道場でビジネスについて学んでいくわけですね。授業はどんな内容になるんでしょうか。
講義はスタートアップのチーム作り、課題の検証の仕方、ファイナンスなどを学んでいきました。特に理論だけではなく、良いケース、悪いケースのケーススタディ的なものがあったのは勉強になりました。中でも一番印象に残っているのは、東大のOBの起業家の方が講演に来てくださったのが、刺激になりました。
Q. そのあと、ビジネスコンテストで優秀賞を獲得されていますよね?これは授業の一環になるんでしょうか?
これは授業の延長で、希望者がチームで参加できるという形でした。
Q. もうビジネスコンテストに出る前には起業しようと思っていたんですか?
どちらかというとコンテストに参加していく中で、自分たちで事業を作って「お客様の課題解決したい」という気持ちと、「自分たちにも出来るんじゃないか」という気持ちが芽生えていきました。ただし、その当時はどういう事業で、どのタイミングで会社作って・・・というところまでは解像度高く考えていたわけではなくて、割と面白いから突き進んでいたという感じでした。
Q. そんなに簡単に「出来そう」と思わないと思うが、どんなことがきっかけになりましたか?
授業の中で、いろんな事例を知ったり、学生起業家の先輩の姿を見れたことで、具体的なイメージが描けたことが大きかったです。
あとは、東大が起業に対するサポート体制があったことが大きいです。失敗のリスクを減らして、挑戦をウェルカムとしてくれる環境風土を作ってくれていたおかげで、挑戦するハードルを下げてくれていたのは大きかったと思います。
そして最も大きかったのは、一緒に取り組んでいる仲間、今のメンバーの存在です。自分一人でだと踏み出しにくいところもあったんですが、学部の頃からラクロスを一緒にプレーしていて、人となりが分かっている彼らと一緒に挑戦できるのは心強かったです。その彼らとラクロスとは違う土壌で挑戦できるというのは大きい要員でした。
Q. そのあとはどういう時系列で起業に至るんですか
アントレが4月、8月のビジコンで最優秀賞、10月から休学してやってみようとなりました。当初は法人化もせず、プロジェクトという感じで。バイトしながらチームに月数万円ずつお金入れてやっていた感じでした。
実は、休学直後は、ビジネスコンテストのアイディアを形にしようとしていたんですが、その事業はうまくいかずに終了という形になりました。そこで、ビジネスコンテストと実際のビジネスが大きく違うのだということを感じました。ただ、最初から成功はしないというのは、講義の中で聞いていたので、心構えとしてはあったので、精神的にダメージはあまりなかったように思います。ここからあと何回打席にたてるかを考えていた気がします。
半年間のアントレ道場を経て事業開始
Q. ありがとうございます。アントレ道場でビジネスを知って、8月に最優秀賞、10月に休学して、メンバーとバイトしながら事業開始。ものすごいスピード感ですね。最初に形にしようとしていたビジネスコンテストの時のアイディアについて教えてください。
これは旅行系のサービスで、Google Mapとトリップアドバイザーを掛け合わせたようなサービスでした。Googleストリートビューみたいに360度ぐるっと見渡せて、観光地とかホテルを選べるサービスでした。自分が旅行を好きだったというのもあって、旅先選びで感じていた”めんどくさいな”を解決しようとしているものでした。
Q. せっかくなので、もう少し詳しく聞かせてください。ご自身のどういった経験やシーンがもとになったのですか?
例えば、白川郷とか岐阜とか高山あたりに行こうとした場合に、どこがいいかはネットで調べますよね?ブログとか情報サイトとか見ても”あまりよく分からないな”と感じていて。一番感情に訴えやすい”視覚”で360°雰囲気が分かることが”行きたい”気持ちが喚起されるんじゃないかと考えていました。
Q. それは最終的にどうなったんでしょうか。
プロトタイプまで作ったところで、クローズとしました。ユーザーへのヒアリングを行った際のスコアでは「従来の情報サイト型」より「360°が見えるVR型」の方がよいという結果が出てたんですが、ビジネス的に難しいなと感じてクローズする決断をしました。
Q. どの辺がビジネス的な難しさでしたか?
”本当に課題があって”ベストなソリューションが360°見えることというわけではなく、どちらかというと、ソリューションありきで課題を探してしまったというのが、1つの過ちだったなと。
というのも、当時、自分が360度が撮影できるカメラっていうソリューションが面白いと感じていて、自分自身でも旅行先で景色を撮影したりしていたんですよね。そういうのって観光と相性が良くて、使えるねと。。
あとはカスタマージャーニーを考えたときに、難しさがあるなと。
例えば、旅先を調べようと思うとGoogleやInstagramなどで検索するじゃないですか?で、じゃらんや楽天トラベルなどの旅行サイトが出てきて、その中で調べていくという行動になると思うんです。ですが、このサービスってアプリじゃないと視認性が悪くて。旅行の旅先を選ぶというカスタマージャーニーの中にアプリをインストールするというアクションがのっかってこないなと。
また、マネタイズを考えても、宿泊施設に送客するしかなくて、「集客もできない」「送客もできない」となるとビジネスとして成立しないのではないかという壁に早々にぶつかったという感じでした。
Q. また、「クローズする」という判断は決して簡単なものではないと思うのですが、どういった部分が決断のポイントとなりましたか?
事業って大変なことがあって、いろんな人の人生も背負っているので、絶対いけるって確信がないと突き進んではいけないなと。やっていく中でこれはよくないかもなあと感じるくらいなら撤退した方がいいなと。その当時はこれでいけるんだろうかという不安が色々とあって、このまま続けるより撤退したほうがいいなと判断しました。
Q. 磨いていくというフェーズもあると思うんですが、
全ての事業フェーズにおいて何を仮説検証していく事だと思うんですが、その時はどの仮説をとってもイマイチだと感じていて・・・。
あとはやっぱり、究極的には、チームの勢いだったかもしれないです。いけそうな雰囲気なのか、ダメそうな雰囲気なのか。実は、シード期・創業期はそういった定性的な勢いが最も大切な気がします。そこで自分の気持ちにうそをついてしまうとどんどんしんどくなっていくと思うので。正直な決断を出来たことは今考えると良かったなと思っています。
試行錯誤を経て『日本を豊かに出来る事業』へ
Q. その次はどんなことをしていったのでしょうか
観光系のサービスをクローズした後は、結構模索した感じで・・・。
例えば、東大生の強みを活かして教育系の事業をしようと思って、小学生向けのプログラミング教室をやろうとしたりしました。チラシをまいて場所を借りて、トライアルで授業をしてみたり、
コロナでダメージを受けていた飲食店向けのサブスクを提供してみたり、
どれもローカルではやっていけそうではありましたが、スケールする絵が見えないことや、自分たちが人生をかけて取り組む意義みたいなものを考えたときに、「違うんじゃないか」と思うようになりまして・・・。
この事業に取り組むことで日本を豊かに出来るものはなんだろうと・・・。
そこで、日本の製造業は、戦後の日本の経済成長を発展させてきた”誇るべき産業”でありながら、業界として大きな課題を抱えていました。これこそ自分たちが解決すべき課題なのではないかと思い製造業向けのSaaS『匠フォース』がスタートしました。
LeadXでは、日本を豊かにするための仲間を募集しています!
Q. 前編の最後に採用に関してお聞かせください。今御社では、採用を強化しているということですが、どういった方と一緒に働きたいとお考えでしょうか。
一番は「一緒に気持ちよく働ける人」ということになります。もちろんスキルや経験というのもあるんですが、一緒に働いていくうえではコミュニケーションが誠実である人と働きたいなと思います。
Q. 前田さんとお話しさせていただくと、どんな質問にも真摯に答えてくださる誠実さと同時に、回答が理路整然としている思考力も感じますが、どちらかというと誠実さが大切ということなんでしょうか?
そうですね。スキルや経験などは仕事をする中で身に着けていってもらえればと思うので。
Q. もし今御社に入るとどんな事業フェーズでどういった業務になるのでしょうか。
本当に事業を0から1で作っていって、お客様に価値を届けて、業界を良くしていく・・・というリアルなところが経験できるフェーズかと思います。
一方でやはり受け身な姿勢では、難しいかと思います。ここにいるメンバーも含め社員全員が成長していかないと会社も成長していかないので「俺が会社を成長させてやるんだ」という人たち同士で切磋琢磨していければと。
ありがとうございました!
製造業界のDXを進める見積業務支援のSaaSを提供しているLeadX社の前田さん。
どんな質問にも真摯に対応してくださる姿勢と明快な解答をしてくださるクレバーさを強く感じました。まさにコミュニケーションが気持ちよい人を体現されていると感じました。
LeadXでは一緒に働く仲間を募集しています。
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