エグゼクティブサマリー(えぐぜくてぃぶさまりー:Executive Summury)とは一般に事業計画書の要約のことを指し、事業計画書の先頭部分に付けることで事業の概要や事業計画書の目的などを簡単に理解できるようにするものです。もしくはその他の書類の要約部分に用いられる。
そこで本記事では以下の構成でエグゼクティブサマリーの書き方を説明します。
- エグゼクティブサマリーとは
- エグゼクティブサマリーの書き方
- エグゼクティブサマリー上達の3ステップ
- エグゼクティブサマリーのサンプル・テンプレート
エグゼクティブサマリーとは
まず本章でエグゼクティブサマリーとは何かを説明します。具体的には以下の2つの項目で説明します。
- 広義と狭義のエグゼクティブサマリー
- エグゼクティブサマリーを作成する目的
エグゼクティブサマリーの意味|広義と狭義のエグゼクティブサマリー
まず本章ではエグゼクティブサマリーの意味を説明します。
エグゼクティブサマリーは、一般的に使われている狭義のエグゼクティブサマリーと、広義のエグゼクティブサマリーに分かれます。順に説明していきます。
一般的には事業計画書の概要を指すことが多い
検索していただくと一目瞭然ですが、エグゼクティブサマリーは一般的には事業計画書の概要を意味します。
事業計画書を簡潔にまとめ、読み手の理解を助けるものです。
広義にはビジネス文書のサマリーを指す
しかし広義には全てのビジネス文書の要約を意味します。
従って、事業計画書に限らず調査レポートや企画書でもエグゼクティブサマリーを記載します。
以下にコンサルタントが作成した資料の例を添付いたしますのでご確認ください。
①外資コンサルアクセンチュア作成!ブラジルへの発展促進にかかる調査企画書(企画書.com)
②外資コンサルアクセンチュア作成!自動走行の国際標準に関する企画書(企画書.com)
エグゼクティブサマリーの目的
次にエグゼクティブサマリーを作成する目的について説明します。エグゼクティブサマリーは大きく2つの役割を持っています。
- 読み手が事業計画書を読む価値があるかを判断すること
- 事業計画書を読む際の理解のサポートをすること
1.読み手が事業計画書を読む価値があるかを判断すること
事業計画書を読むのは、社外の場合は投資家や銀行の担当者ですし、社内の場合は決裁者です。
そして彼らは日々、大量の書類を読まなければなりません。当然彼らは読む価値があるもの以外に目を通しませんし、時間も使いません。
そんな彼ら投資家や決裁者にとって全ての事業計画書に目を通すことは少ないです。
そこでエグゼクティブサマリーを最初のページに記載することで事業の価値や計画書の価値を瞬時に判断することが出来ます。
逆にいうと、エグゼクティブサマリーの出来次第で判断がされるということです。
事業計画書全体にとってそれくらい重要度が高いのがエグゼクティブサマリーです。
2.事業計画書を読む際の理解のサポートをすること
2つ目の役割は事業計画書の全体像を説明し、その後の詳細の理解を助ける役割です。
もちろん目次は必要ですが、それ以外にエグゼクティブサマリーがあることで一目で全体が把握でき、その後の詳細なデータや戦略がどの部分を説明しているかが分かるため理解しやすくなります。
エグゼクティブサマリーと以降の章は関連するように作りましょう。
エグゼクティブサマリーの書き方
次にエグゼクティブサマリーの書き方について説明します。以下の項目で説明します。
- エグゼクティブサマリーの様式
- エグゼクティブサマリーの項目
- 事業フェーズ毎のエグゼクティブサマリーの書き方
- 事業形態毎のエグゼクティブサマリーの書き方
エグゼクティブサマリーの様式
エグゼクティブサマリーに特定の様式がありませんが、一般的には後のビジネス文書(事業計画書、調査レポート、企画書など)に合わせて、WordやPowerPointで作成します。
そしてエグゼクティブサマリーはビジネス文書の先頭につけます。目次の次に配置するのが一般的です。
また要約するのが目的ですのであまり長くならないようにしましょう。基本的には1枚にまとめるように心がけ、最大でも3枚以内に収まるようにしましょう。
エグゼクティブサマリーの項目
次にエグゼクティブサマリーの項目を説明します。項目は大きく9つあります。
- 事業計画書の目的
- 事業名
- 事業概要
- ビジネスモデル
- ニーズ
- 自社の強み
- 市場
- マーケティング戦略
- アクションプラン
この中でご自身の事業に合わせて必要な項目を選んでエグゼクティブサマリーを作成します。1~4+理解を助けるもの2個ぐらいを目安としましょう。
1.事業計画書の目的
まずは事業計画書を作成した目的を説明します。なぜこの事業計画書を作成し、読み手にどんな行動をしてほしいかを定義します。
定義されていなければ、たとえ良い事業計画だとしても読み手に何をしてほしいかが明言されていなければ「良いね!・・・それでどうしたらよいの?」となってしまいます。
社内の承認をしてほしいのかもしれないし、事業計画自体のレビューが目的かもしれません。もしくは協力してくれそうな人や企業を紹介してほしい・・・等
具体的に書くようにしましょう。
2.事業名
次に事業名を記載します。事業について説明しているから名前はいらないと思ってしまうかもしれませんがそれは間違いです。
前述のように読み手は日々大量のビジネス文書を処理している方がほとんどです。
そこで一度聞いたくらいではほとんど記憶に残っている事はありません。
よっぼど印象的でなければ相手が後日、自分のことや自分の事業について覚えてくれていることはないと思いましょう。
そこでやりすぎかなと思うくらい特徴的な名前をつけるようにしましょう。
3.事業概要
3つ目は事業概要です。事業概要は事業名とは違いその事業をずれなく説明します。
今回添付したテンプレートでは以下の3点で定義しています。
- 誰に(想定顧客)
- 何を(提供価値)
- どうする(顧客が受け取るメリット)
5W1Hなどを用いて具体的に説明するようにしましょう。
4.ビジネスモデル
4つ目はビジネスモデルです。あなたの事業に合わせて以下のようなフレームワークを使い分けましょう。
- ビジネスモデルキャンバス
- カスタマージャーニー
- バリューチェーン
- リーンキャンバス・・・etc
その事業を成立させるために必要なものが網羅されているフレームワークを選ます。
5.ニーズ
5つ目はニーズです。ニーズの部分では以下の2点を説明します。
- 顧客の抱えている課題
- それに対するソリューション
ニーズは可能な限り根拠があるとよいですが、フェーズによっては仮説ベースになることもあります。
あなたが考えている課題やソリューションをロジカルに説明しましょう。
6.自社の強み
6つ目に自社の強みを説明します。自社の強みとはその事業をなぜ自社が達成できるのか、自社がやることのメリットを説明します。以下の項目を盛り込むと良いです。
- 経営陣の経験
- 既存事業のノウハウ
7.市場(PEST、5フォース)
7つ目に市場の状況です。以下のフレームワークを用いるとよいです。
- PEST分析:業界を取り巻く環境を分析するフレームワーク
- ファイブフォース分析:業界の収益性を決める5つの要因を分析するフレームワーク
8.マーケティング戦略(4P)
マーケティング戦略では、販売や仕入の流れを定義します。4Pというフレームワークを用いることが多いです。
9.アクションプラン(WBS、KGI/KPI)
最後にアクションプランを説明します。アクションプランは本日から事業に対してのマイルストーンとアクションを定義することです。
立上までのアクションやマイルストーンが具体的かつ論理的であるほど迷わず進むことが出来ますし、間違ったタイミングで的確に引き返すことが出来ます。
またアクションプランが明確でなければ収益化まで時間がかかってしまい、結果的に人件費等々のコストがかさみます。
社内・社外を問わず投資を受ける場合には明確である必要があります。
アクションプランを定義するためには以下の2つのフレームワークを用います。
- WBS(Work Breakdown Structure)
- KGI/KPI(Key Goal Indicator/Key Performance Indicator)
ここまで項目の説明をしてきましたが次項からはどの項目のどのフレームワークを使ってエグゼクティブサマリーを作成すべきかを事業フェーズ毎と事業形態ごとに説明していきます。
事業フェーズ毎のエグゼクティブサマリーの書き方
まずは事業フェーズ毎のエグゼクティブサマリーの書き方をご説明いたします。大きく2つのフェーズについてご説明しますので、ご自身の状況に合わせてお使いください。
- 立上期は将来性や事業の価値を説明する
- 伸長期はニーズに対する実績を説明する
立上期は将来性や事業の価値を説明する
まず立上げ当初はこの事業を行う意義や将来性について説明します。
この事業がうまくいけば社会にどんな影響を与えるかや将来の発展性、この事業を行う事によって得られるメリットについて説明します。
初期は仮説ベースで、実績や根拠が乏しい場合が多いため、もし投資してうまくいけばどんなメリットがあるかをしっかりと説明します。
もちろん根拠や実績はあるに越したことはないですがまずはこの事業をやるべき理由が分からないと投資家も社内の承認も仲間集めも出来ません。
そのうえでアクションプランも具体的である必要があります。
何をやるかも決まっていないのにお金を出す人はいないので可能な限り具体的に考えておきましょう。
この時、まだ検証できていないモノに関しては、いつのタイミングでどうやって検証するかを説明できれば良いです。
伸長期はニーズに対する実績を説明する
一定以上、事業を進めてからの事業計画書は実績をしっかりと説明します。
過去にどんな仮説検証を行い、どのくらい売れたのかなどを説明します。
売上や利益ベースで話を進められるのが一番ですが、それ以外でもリード顧客の数や質、関係性構築なども含めてあなたが今まで何をしてどのような結果だったかを説明します。
適切なアクションを積んでいると伝えることが大切なので、マイルストーンと実績が分かりやすいとよいでしょう。
事業形態毎のエグゼクティブサマリーの書き方
次に事業形態毎のエグゼクティブサマリーの書き方について説明していきます。特にビジネスモデルを説明するためのフレームワークの使い分けについて詳しく説明します。
そこで今回は以下の3つの事業形態に対して説明していきます。
- 最も一般的
- WEBサービス
- 製造業
最も一般的にはビジネスモデルキャンバスを使う
まず最も一般的にはビジネスモデルキャンバスというフレームワークを使います。その名の通りビジネスモデルを定義するためのフレームワークです。
ビジネスモデルモデルキャンバスはどんな事業や業界にも当てはまるように網羅的な項目となっていますので、迷ったらこちらを使うことをお勧めします。
ビジネスモデルキャンバスについては以下の部分で説明しています。
・【テンプレ有】事業計画書の項目や書き方、学び方まで1記事で説明!>ビジネスモデルキャンバス
WEBサービスならカスタマージャーニーマップを使う
WEBサービスの場合は顧客の動きによって、取るべきマーケティング戦略や設定すべきキャッシュポイントが異なります。
そこでWEBサービスの場合にはカスタマージャーニーマップを用いて、顧客の動きを可視化することで事業全体の流れを把握することが出来ます。
カスタマージャーニーマップの作成方法はこちらの記事にまとめています。
製造業ならバリューチェーンを使う
また製造業の場合は複数の部品を仕入れて組み立てて、運搬し、販売や広告するという流れとなり、仕入やロジスティクスの部分が定義されている必要があります。
そこで製造業の場合はバリューチェーンを使うとよいです。
こちらはサプライチェーンに提供価値の観点も含めた仕入から販売までのトータルの流れを定義するフレームワークなので、こちらを使えば事業の流れが可視化されます。
エグゼクティブサマリー上達の3ステップ
前章でエグゼクティブサマリーの項目や使い分けについて説明してきましたが、実際に書いてみると、伝わりにくいんじゃないかとか、なぜか見た目が悪く見えるなどの思いが出てくると思います。
本章では3ステップでエグゼクティブサマリーの上達方法について説明していきます。この順番で進めていけばいつのまにか分かりやすく、見やすいエグゼクティブサマリーが作れるようになっていきます(以下に3ステップを記載)。
- ステップ1|内容が伝わる
- ステップ2|興味をそそられる
- ステップ3|判断するための情報が集まっている
ステップ1|内容が伝わる
エグゼクティブサマリー上達のステップ1は内容が抜け漏れなく記載されているです。必要な項目が構造化されていないとまず伝わりません。
何となく見た目がきれいだけど記憶に残らないようなプレゼン資料がこれにあたります。
まずは必要な項目が漏れなく記載されている状態を目指しましょう。
そのためには特に「なぜ」の部分が明確である必要があります。
項目でいうところの事業計画書の目的と事業の概要がそれにあたります。
事業について深く考えるほどその考えた部分を詳しく話してしまいがちですが、読み手は最も手前のなぜやるのかを理解しないと詳細に進んではくれません。
また自身でもなぜの部分が明確だと詳細に落とし込むときに論理的に考えやすいです。
WHY→HOW→WHATの順で説明しましょう。
ステップ2|興味をそそられる
漏れなく構造化出来たらステップ2では内容を徹底的に絞り込みます。
必要な理由を明確に説明できる項目以外は全て省きます。何となく色々な情報を詰め込みたくなりますが、それらの情報は理解の妨げになるので全て絞り込みます。
その上で図示することでより理解しやすくなります。
例えば、ビジネスモデルであれば一般的なフレームワークから最重要項目を抜き出して図示しますが、その時にピクト図解を使ってみると図示しやすいです。
以下に参考文献を記載しますので是非ご覧ください。
また以下のようなアイコン素材のサイトもうまくご活用ください。
ステップ3|判断するための情報が集まっている
エグゼクティブサマリーの上達ステップ3つ目は、読み手が判断するための情報が含まれていることです。
1章でご説明したようにエグゼクティブサマリーは読み手が事業計画書を読む価値があるかを判断するためのモノです。
したがってその読み手が何を基準にどんな判断をするかを考え、その判断の基準となる情報や根拠となるデータを記載する必要があります。
具体的に言うと、ニーズのアンケート調査で適切な結果が出ていることや、開発から販売までの流れが図示されていること、1年後までのアクションプランが明確であること・・・等
相手によって基準の軸があるので、それを記載するようにしましょう。
エグゼクティブサマリーのサンプル・テンプレート
最後にエグゼクティブサマリーのサンプル・テンプレートを添付します。
今回は以下の2つのパターンのサンプル・テンプレートを添付しています。
- フレームワークを用いたエグゼクティブサマリー
- 事業計画書の構成に沿ったエグゼクティブサマリー
以下のフォームに企業名・氏名・メールアドレスをご入力いただくとメールにテンプレートをお送りいたします。テンプレートをダウンロードの上、以降の説明を読んでいただくとスムーズかと存じます。
フレームワークを用いたエグゼクティブサマリーのサンプル
まずフレームワークを用いたエグゼクティブサマリーのサンプルがこちらになります。
項目としては以下の8つであり、一般的なフレームワークを組み合わせてエグゼクティブサマリーを作成しています。
- 事業計画書の目的
- 事業名
- ビジネスモデル(ビジネスモデルキャンバス、バリューチェーン、カスタマージャーニーマップ、リーンキャンバス等)
- 外部環境分析(PEST分析)
- 企業分析(3C分析)
- 経営分析(収益予測)
- マーケティング戦略(4P)
- アクションプラン(KGI、KPI)
事業計画書構成に沿ったエグゼクティブサマリーのサンプル
次に事業計画書の構成に沿ったエグゼクティブサマリーのサンプルがこちらになります。
この方法だと後ろに続く事業計画書の内容とリンクするため理解がしやすく、ビジネスモデルの説明の部分を大きくとっているため印象付けたい場合に有効です。
項目は以下の6つです。
- 事業計画書の目的
- 事業名
- 事業概要(誰に、何を、どうする)
- ビジネスモデル(ビジネスモデルキャンバス、バリューチェーン、カスタマージャーニーマップ、リーンキャンバス等)
- 経営分析(収益予測)
- アクションプラン(KGI、KPI)
まとめ
以上がエグゼクティブサマリーの書き方です。事業計画書に限らずサマライズする能力は必須のビジネススキルとなるので是非本記事やサンプルを用いて作成してみましょう。
~戦略コンサルへ転職し『起業』『ハイクラス転職』『自由なキャリア』へ~
マッキンゼー、BCG、ベイン…このような戦略コンサルでは、高いパフォーマンスを求められる反面、経験をするとどんな事業や会社でも通用する高いビジネススキルが身に付きます。
コンサルを経験し、起業する人、事業会社で役員ポジションで転職する人、スタートアップの立ち上げに参画する人。はたまた海外を放浪する人なんかもいました。
今後も今の会社で続けていくのか、それとも早い時期に高いパフォーマンスを求められる環境に身をおいてその後に自由なキャリアを手にするのか。
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マッキンゼー、BCG、ベイン等出身者の講師チームがトップ戦略コンサル企業へ内定を導きます(内定率73%)。複数名の担当講師による継続的かつ多角的な全20回の指導により、内定の確度を底上げします。
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