建設業は本当に人手不足なのか|20年で仕事は4割増、働き手は107万人減
需要は増えているのに、担い手は20年で107万人減った
そもそも建設現場の作業員は、人手不足だから採れないのでしょうか。答えはイエスです。
20年前と現在で、建設投資額・建設業従事者・職人さん(建設技能者)の数を比較してみます。
| 項目 | 2004年 | 2024年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 建設投資額 | 51.9兆円 | 73.0兆円 | +21.1兆円(+40.7%) |
| 建設業従事者 | 584万人 | 477万人 | ▲107万人(▲18.3%) |
| 職人の数(建設技能者) | 392万人 | 300万人 | ▲92万人(▲23.5%) |
出典:国土交通省「建設投資見通し」(平成16年度・令和6年度/名目値)、日本建設業連合会「建設業の現状」(総務省「労働力調査」)
建設投資が21.1兆円増えたにもかかわらず、建設業従事者は107万人減りました。そのうち92万人が職人さんです。減った人数の9割近くが、現場で施工にあたる人材ということになります。
なお建設投資額は名目値のため、資材価格や労務単価の上昇分を含みます。そのまま「仕事量が4割増えた」とは言えません。
それでも、工事の仕事は減っていないのに、それを担う人だけが減っているという構造ははっきり確認できます。
若手の減り方が最も急|29歳以下は20年で36%減
建設業全体の人数が減っているだけではありません。年齢別に見ると、より深刻な特徴が出てきます。
| 年齢層 | 2005年 | 2025年 | 増減 | 増減率 |
|---|---|---|---|---|
| 29歳以下 | 88万人 | 56万人 | ▲32万人 | ▲36% |
| 30〜49歳 | 238万人 | 174万人 | ▲64万人 | ▲27% |
| 50〜64歳 | 205万人 | 168万人 | ▲37万人 | ▲18% |
| 65歳以上 | 37万人 | 80万人 | +43万人 | +116% |
| 合計 | 568万人 | 478万人 | ▲90万人 | ▲16% |
出典:日本建設業連合会「建設業の現状」(総務省「労働力調査」) ※50〜64歳は公表値からの差分算出。
65歳以上が2倍以上に増え、いまの現場を支えている
65歳以上で建設業に従事する人は、37万人から80万人へと2倍以上に増えています。
もし65歳以上が20年前と同じ37万人のままだったら、現在の就業者は435万人です。いまの478万人という数字は、引退していないシニア層によって下支えされていると言えます。
29歳以下は88万人から56万人へ|20年で3人に1人が消えた
一方、29歳以下は88万人から56万人まで減りました。20年間で32万人減、率にすると36%の減少です。
減少率で見れば、最も急速に薄くなっているのが若手ということになります。
ただし、若年人口そのものも減っている
この背景には、日本全体で若年人口が減っていることもあります。建設業だけが若者に選ばれなくなった、という単純な話ではありません。
ただし採用する企業側から見れば、若手の採用候補者そのものが以前より少ないという事実は変わりません。
参考:総務省統計局「人口推計」
求職者1人を8社で奪い合う|建設職種の求人倍率は全職種の3〜6倍
さらに問題なのが、採用競争の激しさです。
| 職種 | 有効求人倍率 |
|---|---|
| 建設躯体工事従事者(型枠大工・とび・鉄筋) | 7.75倍 |
| 土木作業従事者 | 5.67倍 |
| 建築・土木・測量技術者(施工管理を含む) | 5.12倍 |
| その他の建設従事者 | 4.22倍 |
| 電気工事従事者 | 3.28倍 |
| (参考)全職種平均 | 1.19倍 |
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」(2025年4月分)
建設躯体工事は7.75倍|競合7社に勝たなければ1人採れない
7.75倍というのは、単純化すると求職者1人に対して約8件の求人がある状態です。
つまり競合7社に勝たなければ、1人を採用できない。求人票を出して待っているだけでは、選んでもらえません。
そして注目すべきは、施工管理を含む技術者も5.12倍だという点です。「職人が採れない」という話に見えて、技術者側も同じくらい採れていません。どちらか一方の問題ではないということです。
採用単価は20年で2倍|53.3万円から110.6万円へ
競争が激しくなれば、当然コストも上がります。
| 年度 | 常用就職1件あたりの紹介手数料 |
|---|---|
| 2004年度 | 53.3万円 |
| 2014年度 | 67.3万円 |
| 2024年度 | 110.6万円 |
出典:厚生労働省「職業紹介事業報告」より作成(有料職業紹介事業の手数料収入÷常用就職件数)
20年前は53.3万円で1人採用できていたものが、いまは110.6万円かかる。およそ2倍です。
なお、建設業に限定した採用単価の統計は見つかりませんでした。ただし建設関連職種の有効求人倍率が全職種平均の3〜6倍である以上、建設業の採用単価がこの平均を下回っていると考える理由はありません。
母集団が減り続けている中で、競争だけが激しくなり、コストも上がっている。これが建設業の採用の現状です。
とはいえ、人がいなくても回る現場を簡単に作れるわけでもありません。そこで次章では、では誰をターゲットにすべきかをお話しします。
建設業は誰を採用ターゲットにすべきか|経験者の外に母集団がある
建設業への転職者の半数以上は、建設業の外から来ている
ここまでを読むと「だから建設経験者を何とか採らなければ」と考えたくなります。しかし、ここで発想を変える必要があります。
実は、建設業に転職してくる人の半数以上は、建設業以外から来ています。
| 前職 | 割合 |
|---|---|
| 第3次産業 | 45.5% |
| 建設業 | 45.2% |
| 製造業 | 8.4% |
出典:厚生労働省「雇用動向調査」(令和6年) ※建設業全体への転職入職者で、施工管理・事務・営業なども含みます。
建設業出身者は45.2%。残りの53.9%は、建設業以外の仕事から転職してきています。
建設経験者だけをターゲットにすると、すでに人手不足の業界の中で人材を奪い合うことになります。一方、製造業・飲食業・サービス業・物流業まで対象を広げれば、候補者の母数が一気に増えます。
建設業を含む第2次産業は、いまや「人を渡す側」になっている
むしろ、建設業を経験した人は他業界へ出ていっている可能性が高い。長い時間軸で見ると、それがはっきりします。
| 年 | 転職入職者 総数 | 3次→2次(流入) | 2次→3次(流出) | 差引 |
|---|---|---|---|---|
| 1997年(建設業就業者ピーク) | 308万人 | 41.0万人 | 33.9万人 | ▲7.1万人(流入超過) |
| 2004年 | 433万人 | 35.5万人 | 46.4万人 | +10.9万人 |
| 2024年 | 490万人 | 25.0万人 | 48.0万人 | +23.0万人 |
出典:厚生労働省「雇用動向調査」第1表・第7表・第10表をもとに作成。転職入職者数は「入職者数×(転職入職率÷入職率)」で算出した推計値。
第2次産業(建設・製造・鉱業)と第3次産業(サービス・飲食・小売ほか)の間の人の移動です。
建設業の就業者数がピークをつけた1997年が、第2次産業に人が流れ込んでいた最後の年でした。翌1998年に逆転し、以降ずっと流出超過が続いています。
2024年は流入25.0万人に対して流出48.0万人。差し引き23万人の純流出です。
ただし見方を変えると、それでも毎年25万人が第3次産業から第2次産業へ移っているということでもあります。流出のほうが多いとはいえ、他業界からの流入は依然として大きな母集団です。
もしこれまで建設業界経験者だけを狙った採用をしていたなら、他業界からの転職者をターゲットに含めるだけで母数が大きく増えます。
狙うべき年代は25〜29歳|転職が多く、離職が落ち着く唯一の層
若ければ誰でもよい、というわけではありません。年齢別の転職入職率と離職率を見ると、特徴がはっきり出ます。
| 年齢階級 | 転職入職率 | 離職率 |
|---|---|---|
| 19歳以下 | 20.8% | 32.6% |
| 20〜24歳 | 13.4% | 25.9% |
| 25〜29歳 | 15.1% | 15.6% |
| 30〜34歳 | 10.3% | 13.7% |
| 35〜39歳 | 7.9% | 9.1% |
| 40〜44歳 | 6.8% | 8.2% |
| 45〜49歳 | 6.0% | 6.3% |
| 50〜54歳 | 5.1% | 6.7% |
出典:厚生労働省「雇用動向調査」(令和6年・男性)。全産業の数値であり、建設業単体ではありません。
10代や20代前半は転職する人も多い一方で、離職率のほうが10ポイント以上高い。入っても抜けていきます。
30代になると離職率は下がりますが、そもそも転職する人自体が少なくなります。35歳を超えると、市場にほとんど出てきません。
その間にある25〜29歳は、転職する人が比較的多く、20代前半ほど離職率も高くないという層です。若手の現場職採用を考えるなら、有力なターゲットの一つになります。
未経験採用で狙うべき前職|インタビューで挙がった3つの職種
ここからは統計だけでなく、実際に現場で働く方へのインタビューで聞いた話を紹介します。建設現場で働く人の前職には、意外に幅がありました。
ガソリンスタンド|屋外・力仕事・声出しに慣れている
まずイメージしやすいのが、ガソリンスタンドで働く人です。
- 外で働くことに慣れている
- 身体を使う仕事に抵抗がない
- 声を出して周囲と連携する
- 暑さや寒さのある環境で働いた経験がある
建設現場との共通点が多く、建設業未経験でも仕事環境へのギャップが小さい人材だと考えられます。
飲食店のキッチン|段取りと連携、そして「接客が少ない」
飲食店のキッチンスタッフも候補になります。身体を動かし、周囲を見ながら段取りを組み、複数人で連携し、忙しい時間帯に手際よく動く。現場仕事と近い部分が多くあります。
そしてインタビューでは、「接客より、身体を動かして仕事をするほうが好き」という声も聞かれました。お客さんとのコミュニケーションが少ないことが、キッチンも現場職も選ぶ理由の一つになっているケースがあります。
ホスト・夜職|「次の仕事を探す途中」で建設に出会う
意外なところでは、ホストなど夜職を経験したあとに建設現場へ移るケースについての話もありました。
前の仕事を辞めたあと、ホストをしながら次の職を探していた、という方もいるそうです。一見するとまったく違う仕事ですが、安定した収入を得たい、昼間の仕事へ生活を切り替えたいというタイミングで、建設業が選択肢に入ります。
重要なのは、「建設業で働きたい人」を探すのではなく、「今の仕事から環境を変えたい人」を探すという視点です。
まとめると、狙うべきターゲットはこうなります。
- 建設経験者に限定しない(製造業・第3次産業まで広げる)
- 年代は25〜29歳
- 具体的にはガソリンスタンド、飲食店のキッチンなど
どうやって人を集めるか|「地域 × 前職」で訴求を変える
最後に、どうやって人を集めるかをお話しします。ポイントは、地域と前職によって訴求を変えることです。
愛知と京都では、採用の競合相手がまったく違う
建設現場の作業員を集めようとすると、実は地域性が非常に大きく効いてきます。
製造業が多い地域|響くのは「休み」より「できることが増える」
例えば愛知県は、製造業で働く人が非常に多い地域です。
インタビューでお話を伺った方は愛知ではありませんでしたが、実際に工場勤務から建設現場へ転職した人や、製造業が合わないと感じて他業種を選んだ人がいました。
理由を聞いていくと、
- 同じ作業の繰り返しが自分には合わなかった
- 10年先輩も同じ仕事をしていて、将来が少し不安になった
といった前職への不満が、転職のきっかけになっていました。
こうした人に「建設業界は人が足りません」と伝えても、それほど響きません。それよりも、
- 仕事を覚えるほど、できることが増える
- 資格や技術が身につく
- 将来的に職長や施工管理などを目指せる
といった話のほうが、相手の転職理由と直接つながります。
観光・飲食が多い地域|土日祝休みが、そのまま最大の武器になる
一方、例えば京都なら観光関連の仕事が多くあります。ホテルや飲食店で働いている人は、
- 土日に休みにくい
- 大型連休が繁忙期になる
- シフトが不規則
- 家族や友人と予定を合わせにくい
といった悩みを抱えている可能性があります。
もし自社が土日祝休みなのであれば、それ自体が非常に大きな採用訴求になります。
このように、自社のある地域ではどんな産業が盛んなのかを理解したうえで、ターゲットを考える必要があります。
前職ごとに不満は違う|業界別の訴求対応表
業界によって、仕事に対する不満にはある程度の傾向があります。
| 前職の業界 | 抱えやすい不満 | 建設で伝えるべきこと |
|---|---|---|
| 飲食・サービス | シフトが不規則、土日・大型連休に休めない、収入が安定しにくい | 土日祝休み、固定月給、働く時間の見通し |
| 製造 | 仕事内容が単調、将来のキャリアが見えにくい、スキルが身についている実感が少ない | 現場ごとの変化、資格取得、できる作業が増えること |
| 物流・運搬 | 長時間労働、夜間勤務、身体的な負担 | 固定月給、会社所属の安心感、技術が残ること |
| 建設(経験者) | 休みが少ない、朝が早い、日給月給で収入が安定しない、人間関係や職場の雰囲気 | 固定月給、休みの実態、資格取得支援、直行直帰や社用車 |
もちろん、すべての人が同じ不満を感じているわけではありません。ただ「採りたい人が今どんな仕事をしていて、何に困っているのか」まで考えることで、求人の伝え方は大きく変わります。
求人は「自社の強み」ではなく「相手の転職理由」から書く
採用ページでは、「未経験歓迎」「資格取得支援」「アットホームな会社です」といった自社の特徴を並べてしまいがちです。
しかし本当に重要なのは、それが転職候補者にとって何を意味するのかです。
例えば「土日祝休み」という制度ひとつでも、飲食業から転職する人には「友人や家族と休みを合わせやすくなる」という意味を持ちます。
一方、製造業から転職する人には、休み以上に「仕事を覚えるほどできることが増える」「資格を取って専門性を高められる」という話のほうが響くかもしれません。
だからこそ、次の順番で採用訴求を考えることが重要です。
- 地域にどんな仕事が多いのか
- その仕事をしている人は、何に不満を感じやすいのか
- 自社なら、その不満をどう解消できるのか
まとめ|「建設で働きたい人」ではなく「仕事を変えたい人」を探す
今回は、約20年間の統計データと現場で働く方へのインタビューをもとに、建設現場職の採用について整理しました。
1. 人手不足は実際に深刻
- 建設投資は51.9兆円→73.0兆円。仕事は減っていない
- 従事者は▲107万人、職人は▲92万人。増えたのは65歳以上だけ(2.2倍)
- 躯体工事7.75倍、技術者5.12倍。採用単価は20年で2倍
2. ターゲットは「25〜29歳 × 他業界」
- 建設業への転職者の53.9%は、すでに建設業の外から来ている
- 25〜29歳は転職が多く、離職が落ち着く唯一の層
- ガソリンスタンド、飲食店のキッチンなど、現場と親和性の高い前職がある
3. 集め方は「地域 × 前職」で変える
- 自社の地域にどんな産業が多いかを確認する
- その業界の人が何に困っているかを知る
- 自社の制度を、相手の不満を解消する言葉に翻訳する
建設経験者だけを対象に求人媒体の中で競争する、という採用には限界があります。
「建設業で働きたい人を探す」のではなく、「今の仕事を変えたい人に、建設業という選択肢を届ける」。これがこれからの現場職採用で重要になるのではないでしょうか。

