マーケティングリサーチの方法が理解すると最小のコストで最大限のアウトプットを発揮できます
本記事はマーケティングリサーチの実施方法と使い分けを事業の段階別、調査対象者別にご紹介しています。
一口に調査と言っても世の中に出回っている情報は玉石混交です。ネットで調べてみるとわかるのですが、市場調査と市場分析を混同していたり、調査の内容と実施方法を同列で記載している記事が散見されます。
ネットの情報は業界知識のないライターが書いている場合も多いので、どうしても内容が整理されていなかったり、間違った情報が載っている場合があります。
この記事では情報を分かりやすく構造化してご説明していきます。具体的には次の2点が分かります。
- マーケティングリサーチとは何か
- 今のあなたがするべきマーケティングリサーチが何か
マーケティングリサーチの方法は大きく分けて2つ
マーケティングリサーチには大きく二つの方法があります。定性調査と定量調査です。これらは共にアドホック調査の一部です。アドホック調査とは毎回個別に設計し1度で完結する調査のことです。それに対し、期間内に複数回の調査を行う調査をパネル調査と言います。
また、商圏分析など統計データなどのマクロな数値情報を用いたマーケティングは市場分析となります
包含関係は下のようになります。今回は一般的によく用いられる定量調査、定性調査についてご説明していきます。
定量調査と定性調査の目的の違い
それぞれ目的が異なります。定性調査は仮説の構築や原因の究明をしたいときに使用し、定量調査は仮説の検証や実態を把握したいときに使用します。
また、近年ではそのどちらにも属さない新しい調査方法もあります。以下で詳しく説明します。
定量調査|仮説検証や実態把握に使用
定量調査とは、数値的に顧客のことを把握する調査方法です。一般に、仮説検証や実情の把握をしたいときに使用します。想定顧客に対してアンケートに回答してもらい、その比率や数からニーズを把握します。
定量調査で用いられる調査方法は以下のようなものがあります。
アンケート調査方法一覧
- ①インターネット調査
- ②郵送調査
- ③訪問調査
- ④電話調査
- ⑤FAX調査
- ⑥日記調査
- ⑦会場テスト(CLT)
- ⑧ホームユーステスト(HUT)
①インターネット調査
インターネット上でWEBアンケート等で行う方法です。安価でスピードが速くデータの管理が楽ですが、非インターネットユーザーの調査は出来ないため対象によっては効果が期待できません。
②郵送調査
アンケート用紙を郵送し、回答したものを再送してもらう方法です。安価で幅広い層にアプローチ出来ますが、回収率が低く、回収率が読めないところがデメリットです。
③訪問調査
調査員が直接訪問して質問に回答してもらう方法です。回答率が高いですが、人を派遣するためコストがかかります。一般に、郵送やインターネット調査よりも時間がかかります。
④電話調査
対象者に電話をしてその中で質問に回答してもらう方法です。電話中の限られた時間内での質問となるため、簡単な調査に向いています。
⑤FAX調査
FAXでアンケート用紙を送り、再送してもらう方法です。郵送調査と同様回答率が低いことと、若い世代はFAXを持っていないため世代を選ぶ必要があります。
⑥日記調査
一定期間モニターに商品を使用してもらい日記形式で感想などを書いてもらう方法です。日々の些細な不満や気づきを発見できますが、コストがかかり離脱者が出ます。
⑦会場テスト(CLT)
1か所にモニターを集めて、その中でアンケートに回答してもらう方法です。機密性が保たれる反面、普段とは違う環境のため答えがずれる恐れがあります。
⑧ホームユーステスト(HUT)
モニターの家庭内で商品を使用してもらい、アンケートに回答してもらう方法です。リアルな環境下での意見が手に入りますが、モニター毎に条件がことなり場合があります。
定量調査の手順と手法の詳細は別の記事にまとめましたので是非ご覧ください。
定性調査|仮説構築や原因究明に使用
定性調査は数値では表せない顧客の考えや思いなどを調べることを言います。モニターとの対話によるインタビュー形式とモニターの行動を観察する行動観察形式が主に用いられます。
具体的には、以下に挙げるようなものが定性調査にあたります。
インタビュー調査方法一覧
- ⑨グループインタビュー
- ⑩デプスインタビュー
- ⑪ソーシャルリスニング
- ⑫ニューロリサーチ
行動観察調査方法一覧
- ⑬訪問観察調査
- ⑭ミステリーショッピングリサーチ
- ⑮ショップアロング調査
インタビュー調査
⑨グループインタビュー
複数の対象者がファシリテーターの進行の元で自由に発言や議論を行う方法です。対象者同士の相互作用が生まれますが、1人の深堀は難しいです。
⑩デプスインタビュー
1対1でインタビューしていく方法です。対象者のライフスタイルや価値観も踏まえた深堀が出来る反面、時間がかかるためサンプル数を稼ぐのが難しいです。
⑪ソーシャルリスニング
解析ツールを用いて自社の商材についてソーシャルメディアでの意見や反応を分析する方法です。本音が聞けますが、雑多なため精査が難しいです。
⑫ニューロリサーチ
自社の商材や質問に対して対象者の生体反応も測定し、顧客の反応を多角的に理解する方法。科学的に反応を分析できますが、高額です。
行動観察調査
⑬訪問観察調査
調査対象者の自宅に訪問し、生活を見せてもらいながらヒアリングを行う方法です。普段の生活が見えるので発見も多いですが、リサーチャーのスキルに依存します。
⑭ミステリーショッピングリサーチ
依頼したモニターに実際に購入の一連の流れを行ってもらい感想を伺う方法です。生の消費者の声を聞ける一方、費用がかさみます。
⑮ショップアロング調査
モニターが購入する流れにリサーチャーが同行し、ヒアリングする方法です。リサーチャーが気になる点を即時確認できますが、モニターが普段とは異なる挙動をする場合があります。
マーケティングリサーチ方法の選び方とは
マーケティングリサーチの方法の選び方は事業の段階と対象者別に異なります。以下の図をご覧ください。
ここまでマーケティングリサーチの方法を分類ごとにご説明しましましたが、事業の段階と対象者に応じて、実施すべきマーケティングリサーチの方法が異なります。本章では事業の段階と対象者別に実施すべきマーケティングリサーチの方法をご説明します。
事業の構想段階か検証段階かによってリサーチの方法が異なる
本章では事業の段階別に使用すべきリサーチの方法をご説明します。
まず事業は大きく2つの段階に分かれます。どんな事業を作るかを考える構想段階と作りたい事業が決まっている検証段階です。
構想段階にはアンケート調査や観察調査が適しています
構想段階では現状を正しく把握することと、アイディアを広げることが求められます。
現状把握にはアンケート調査や観察調査が適しており、アイディア出しはインタビュー調査か観察調査が適しています。
以下に構想段階における現状把握とアイディア出しに適しているマーケティングリサーチの方法を示します。
構想段階のマーケティングリサーチ方法
a. 現状把握
- ①インターネット調査
- ②郵送調査
- ③訪問調査
- ④電話調査
- ⑤FAX調査
- ⑬訪問観察調査
- ⑭ミステリーショッピングリサーチ(覆面調査)
- ⑮ショップアロング調査
b.アイディア出し
- ⑨グループインタビュー
- ⑩デプスインタビュー
- ⑬訪問観察調査
- ⑭ミステリーショッピングリサーチ(覆面調査)
- ⑮ショップアロング調査
検証段階にはテスト調査やソーシャルリスニングが有効です
検証段階では、自分の企画した事業に対して、顧客が体験した感想や意見、気づきを調査します。
顧客の感想や意見、気づきを得るためにはホームユーステストなどの体験を伴う調査や広く意見を聞けるソーシャルリスニング等が有効です。
以下に検証段階における調査方法を示します。
c.ローンチ前
- ⑥日記調査
- ⑦会場テスト(CLT)
- ⑧ホームユーステスト(HUT)
- ⑫ニューロリサーチ
d. ローンチ後
- ⑪ソーシャルリスニング
- ⑫ニューロリサーチ
対象者の属性によって有効なリサーチの方法は異なる
次に調査対象者の属性による調査方法をご説明します。大きく年齢と居住地域で分かれます。
それぞれご説明します。
年齢によりアプローチ方法が異なります
一般的にご年配の方はオフラインのアプローチとなり若い世代はオンラインアプローチが有効です。
e. 対象者が年配の世代
- ②郵送調査
- ③訪問調査
- ④電話調査
- ⑤FAX調査
f. 対象者が若い世代
- ①インターネット調査
- ⑪ソーシャルリスニング
居住地域のばらつきにより家でできるか集まるかに分かれます
対象者の居住地域がばらばらであればそれぞれの自宅でできる調査を用い、集中している場合は会場などに集めたり対面の調査が有効です。
f. 対象者の居住地域がばらついている
- ①インターネット調査
- ②郵送調査
- ④電話調査
- ⑤FAX調査
- ⑪ソーシャルリスニング
g.対象者の居住地域が集中している
- ③訪問調査
- ⑦会場テスト(CLT)
- ⑨グループインタビュー
- ⑩デプスインタビュー
- ⑫ニューロリサーチ
以上のような方法の中で自分の状況に応じて選びましょう。
マーケティングリサーチを実際に行う際の注意点
ここまでマーケティングリサーチの方法と状況別の使い方をご説明してきましたが、ここでは実際にリサーチを行う場合の注意点をご説明していきます。
マーケティングリサーチは複数の方法で調査しないと正しい検証が出来ない
まず実際にリサーチする場合はどれか1つの方法では不十分である場合が多く、自分が欲しい答えを得るために複数のリサーチ方法を組み合わせて行います。
例えば、「訪問してアンケートを行い普段使っている商品や購入頻度などを調査し(=現状把握)」、「その後デプスインタビューでさらに仮説の幅出しを行います(=アイディア出し)」。そして現状と顧客の意見から本当のニーズを導き出す等を行います。
また、実際にリサーチを行う場合は、調査期間や調査の内容も事前に設計したうえでリサーチを行います。レポートにまとめる場合はアウトラインを事前に設計しておきます。
こうした事前準備のことを調査設計と呼び、調査設計の質でリサーチ全体の成功が決まると言われるくらい重要です。
調査の仕方に不安がある場合はリサーチ会社に委託するのも1つの手段
設計とサンプル数に不安がある場合はリサーチ会社に委託するのも1つの手段です。
もしあなたがマーケティングリサーチを実施する場合、上記でご説明したような調査設計が必要となります。あなたが得たい答えを「どの方法を用いて」「どんな内容で」「どれくらいの時間をかけて」「どれくらいの規模で行えば妥当性が出るか」を具体化していく必要があります。
この調査設計の工程をうまく作れない時や十分なサンプル数を稼ぐのが難しい場合はマーケティングリサーチ会社に委託するのも有効です。
リサーチ会社は調査設計を日ごろから行っているためノウハウがありますし、アンケート回答者も抱えているので有効なサンプル数の回答も容易に得ることが出来ます。
自社で行う場合との比較も含めて相見積もりを取りことをお勧めします。
まとめ
本記事ではマーケティングリサーチの方法とその利用シーンをご説明しました。思った以上に複雑で、マーケティングリサーチの方法と中身の種類が混同されやすい印象でした。
例えば、ある商材の価格に対する印象を調査する価格感応度調査など調査の中身についても別記事でまとめていますので、そちらもご覧ください。
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