プロジェクトは自然と始まるわけではありません。必ず承認が必要になります。その承認の際に必要なのがプロジェクト憲章と呼ばれるものです。
プロジェクト憲章とはプロジェクトの承認と周知のために作成されるものであります。今回はプロジェクト憲章とは何かとプロジェクト憲章の作成方法をテンプレートを交えてご説明していきます。
会社での承認が必要な提案のための項目が網羅されているので、企画の提案にも役に立つ知識となっています。
プロジェクト憲章とは?
まず本章ではプロジェクト憲章とは何かについて以下の7つの質問に答える形で説明します。
- プロジェクト憲章は何のために作る?
- プロジェクト憲章には何が書いてある?
- プロジェクト憲章は誰が発行する?
- プロジェクト憲章はいつ作る?
- プロジェクト憲章はどうやって作る?
- プロジェクト憲章は誰が作る?
- プロジェクト計画書との違いは?
プロジェクト憲章は何のために作る?
プロジェクト憲章の作成目的は大きく2つあります。承認と周知です。
承認とはプロジェクト立ち上げの許可をもらうことです。プロジェクトには予算や人員、時間を使うことになるため許可なく始まることはありません。プロジェクト憲章は承認のための必要な情報が網羅されています。
次に周知は立ち上げが決まったプロジェクトを関係者に広く伝えることです。プロジェクトは決して1人では達成できません。様々な人に協力してもらいゴールまで走り抜けることとなります。そこでプロジェクト開始時に、関係者にプロジェクトの存在と概要を周知します。
プロジェクト憲章には何が書いてある?
プロジェクト憲章にはプロジェクトの背景とゴール、方法(プロジェクトの概要)を記載します。
すなわち組織として何を目指しているか、そして現状、このプロジェクトの位置づけや目的を定義します。
プロジェクト憲章は誰が発行する?
プロジェクト憲章の発行者はプロジェクトオーナーです。すなわち、社内の場合は上司や役員、社外の場合はスポンサーや顧客の決済者となります。
プロジェクト憲章はいつ作る?
プロジェクト憲章を作成するタイミングはプロジェクトの立ち上げ時です。
プロジェクトには立ち上げ→計画→実行→監視コントロール→終結の5つのサイクルがあります(プロジェクトライフサイクル)。
プロジェクト憲章はその中の最も最初の立ち上げの時の成果物です。
プロジェクト憲章はどうやって作る?
プロジェクト憲章は内部環境と外部環境、組織としてのゴールから落とし込んでいきます。
内部環境とは会社などの組織内部の状況のことであり、外部環境とは組織が属している市場や国家などによる制約です。
これらの現状から組織としてどこを目指すか、そしてそのためにどんな方法があるかを明らかにします。その方法の一部、もしくは全部をプロジェクト化します。
プロジェクト憲章は誰が作る?
プロジェクト憲章はプロジェクトの責任者が作成します。つまりプロジェクトマネージャーです。
従ってプロジェクト立ち上げの第一段階はプロジェクトマネージャーの任命を行います。
プロジェクト計画書との違いは?
プロジェクト計画書との違いは、プロジェクトのサイクルと解像度です。
プロジェクト憲章は立ち上げ期に作成するのに対して、プロジェクト計画書は計画期に作成します。
プロジェクト憲章は立ち上げの承認が目的なのに対して、プロジェクト計画書は実行のための行動計画であり、アクションレベルの解像度に落とし込まれている必要があります。
プロジェクト憲章の作成方法とテンプレート
それではここからプロジェクト憲章の作成方法をご説明します。プロジェクト憲章に記載する項目は大きく5つあります。
- 基本情報|プロジェクト名、PM、作成日、承認者
- プロジェクト背景|立ち上げ理由、ニーズ、前提・制約
- プロジェクト目標|目的、目標、要求、スコープ、成果物
- プロジェクト概要|スケジュール、マイルストーン、予算
- プロジェクトチーム|PM、メンバー、ステークホルダー
またこちらのテンプレートも以下の内容に沿っているので、ダウンロードしながら以下の説明をご確認ください。
基本情報|プロジェクト名、PM、作成日、承認者
まずはプロジェクト憲章の基本情報を記載します。
<基本情報に記載する項目>
- プロジェクト名
- プロジェクトマネージャー
- 作成日
- 承認者
プロジェクト名
まずプロジェクト名を記載します。プロジェクトのことを知らない人が聞いても内容が想像しやすく覚えやすいものにしましょう。
プロジェクトマネージャー
プロジェクトマネージャー名とその責任や権限を記載します。責任や権限に関しては下のプロジェクトメンバーの項目で記述します。
作成日
プロジェクト憲章の作成日、もしくは承認日を記載します。
承認者
承認者の名前、もしくはサインを持って、本プロジェクトの立ち上げとします。
プロジェクト背景|立ち上げ理由、ニーズ、前提・制約
次にプロジェクトの背景や経緯を記載します。
<プロジェクト背景に記載する項目>
- 本プロジェクト立ち上げの理由
- プロジェクトのビジネスニーズ
- 本プロジェクトを進めるうえでの前提条件・制約条件
本プロジェクト立ち上げの理由
まずプロジェクトを立ち上げるに至った理由や経緯を説明します。今までの企業活動や現状を事実ベースで記載します。
プロジェクトのビジネスニーズ
次にこのプロジェクトに関係するビジネスニーズを説明します。プロジェクトの目的ではなく、このプロジェクトを実行することで解決したいビジネス上の課題のことです。
本プロジェクトを進めるうえでの前提条件・制約条件
そして本プロジェクトを進めるうえでの前提条件や制約条件を記載します。一般的に前提や制約となるのは、市場や国家などのルールや法律、設備や人員などの制限です。
プロジェクト目標|目的、目標、要求、スコープ
プロジェクトの背景を明らかにしたあとはプロジェクトが目指す場所を記載します。
<プロジェクト目標に記載する項目>
- 本プロジェクトの目的と正当性
- 現在までに把握している要求事項
- 本プロジェクトの目標と想定される成果物
- 本プロジェクトのスコープとスコープ外
本プロジェクトの目的と正当性
このプロジェクトが終結した時に目指す状態とその確からしさも併せて記述します。
本プロジェクトのスコープとスコープ外
目的のうち、本プロジェクトで対象とするものと対象外とするものを記載します。これによりこの後の計画段階の解像度が上がります。
現在までに把握している要求事項
次に、現在までに把握している要求を記載します。これにより、目的に対して何が求められているかの大枠を把握できます。
本プロジェクトの目標と想定される成果物
そしてプロジェクトの目的と要求に対する分割された目標とその成果物を記載します。現段階で全てを網羅することは出来ない場合も多いので、現在分かっている範囲で記述します。
プロジェクト概要|予算、マイルストーン、スケジュール
次にプロジェクトの概要を記載します。現在把握している範囲でいつまでに何をいくらでやるのかを記載します。
<プロジェクト概要に記載する項目>
- 想定予算
- 想定マイルストーン
- 想定スケジュール
想定予算
プロジェクト全体に対する承認予算を記載します。この場合は現状の想定に予備費を足しておきましょう。
想定マイルストーン
プロジェクト上で考えられる大きなイベントをリストアップします。一般的には複数のメンバーのタスクの合流地点や顧客やオーナーに対するタスクで日程の遅延が許されないものなどを記載します。
想定スケジュール
前項のマイルストーンをスケジュールに落とし込みます。順序と期間を分かっている範囲内で整理します。この時、スケジュールは詳細ではなくプロジェクトの全体像を把握するためのざっくりとしたもので大丈夫です。
プロジェクトチーム|プロジェクトメンバー、ステークホルダー
最後に現在分かっている関係者の洗い出しをします。こちらに記載しておくことで協力を仰いだり、成果物に対する責任が出たりするので、プロジェクトに参加してほしい人は事前に交渉の上、入れておくとよいでしょう。
<プロジェクトチームに記載する項目>
- プロジェクトメンバー
- ステークホルダー
プロジェクトメンバー
プロジェクトチームに入り、以後の計画や実行を進める人物。スキルや経験、役割などとともに記載します。
ステークホルダー
プロジェクトメンバー以外でプロジェクトに関わる人たち。プロジェクトオーナーや顧客、協力組織のマネージャーなどが該当します。
プロジェクト憲章を作成するときのポイント
前章で項目と作成方法を説明しましたが、それだけでは作成出来ません。プロジェクト憲章を作成する際は以下のポイントも意識するようにしましょう。
- 早い時期から承認者とのコミュニケーションを図る
- 作成段階では不確定な部分もある
- 現状把握しているところまでを明らかにする
早い時期から承認者とのコミュニケーションを図る
承認者と直接コミュニケーションを図らなければ認識のずれが生じてしまう
またプロジェクト開始後もこうしたことが続くので立ち上げのタイミングで必ず関係性を気づいておく
作成段階では不確定な部分もある
ただし、そうは言ってもプロジェクト立ち上げ時には不明確な部分があります。それらの不確定要素はその後の計画フェーズで詰めていくことになるので、プロジェクト憲章作成段階では時間をかけすぎずに完成させましょう。
現状把握しているところまでを明らかにする
また、不確定な部分があったとしても変に隠したり、想像で記載するのはやめましょう。立ち上げのタイミングでは何が分かっているか、何が分からないかを正確に記載します。正確にすることで、この後のサイクルでやるべきことが決まってくるので大切な工程です。
まとめ
今回はプロジェクト憲章についてご説明しました。
他にもプロジェクトマネジメントについて知りたい方は以下の記事もご覧ください。
button