BCPとは・・・
災害などの緊急事態に対して被害の食い止めと回復を最速で行うための方針
BCPとは事業継続計画(Business Continuity Plan)のことで、災害や基幹システムの故障など自社だけではどうしようもないことが起きてしまった場合に、その被害を最小限に食い止め、最速で事業を再開するための計画のことです(上図参照)。
今回、コロナの影響で、対面型のサービス事業(美容室や飲食店など)などは事業停止に追い込まれている事業者も多いと聞きます(2020年4月現在)。もし少しでも危機感を持たれた事業責任者・経営者の方は是非今すぐ、計画を作ってください。この騒動に負けずに事業を継続し続けて頂きたいです。私自身も海外(アフリカ)拠点の担当としてこちらを3月時点で作りました。実際計画してみると、自身の想定の甘さや抜け漏れに気づき冷や汗モノでした。。。汗
その経験を皆様にシェアして是非一人でも多くの方のお役に立てればと思い本記事を執筆しています。
それでは以下に目的や作成手順を説明していきます。
BCPを作る目的|社員を守り続けるため
結論から申し上げます。もしあなたに少しでも「守りたい」という気持ちがあるなら今すぐBCPを作成すべきです。気合だけではどうにもならないこともあります。今回のようなことが起こるとどうしようもありません。
BCP作成のタイミング|気づいたとき。今でしょ!
BCPは事前に作っていなかったから騒動が起きたタイミングで作っても遅い。ということはありません。もちろん事前に準備して周知までしていれば不測の事態でも冷静に対応することができます。しかし、ご自身で事業を始めたばかりであるとか、新しいチームの場合はあることのほうが珍しいと思います(もちろん私自身もそうでした)。そしてこのタイミングで作っても非常に有効でした。リスクの見積が出来たことで、今進めるべきタスクがより明確になり、リスクヘッジをしながら事業を進めることが出来ました。
BCPを作成すべき非常事態|外部が大きな要因となるもの
自社だけではどうしようもない外的要因が大きな比率を占めるものに対して、BCPを作成します。今回のコロナのような疫病や災害、システムやテロなどが当てはまります。
該当項目
- 脅威
- 疫病
- 地震
- 火災
- 洪水
- サイバーテロ
- サボタージュ(内外の脅威)
- ハリケーン又は大きな嵐
- 停電
- テロリズム
- 窃盗(内外の脅威、重要な情報及び物品)
- 基幹システムの偶発的故障
BCPと似たもの|BCPとBCM、BCMSの違い
BCPと似たものにBCM(Business Continuity Management:事業継続マネジメント)やBCMP(Business Continuity Management Plan:事業継続マネジメントシステム)などがあります。それぞれ説明とBCPとの違いを説明していきます。
BCM(Business Continuity Management:事業継続マネジメント)|BCPの事前訓練版
BCMは事業継続マネジメントのことであり、突発的な緊急事態に計画するのではなく、事前にその計画を周知や訓練しておくことを指します。工場やチェーン展開しているサービス業など、オンラインで代替できない事業を行っている大規模事業者はBCMを行っています。事業停止に陥ると損害の規模も大きくなるので事前対策を立てる事業者が多いです。BCMで重要なのが継続することです。
BCMS(Business Continuity Management System:事業継続マネジメントシステム)|BCMのための計画
BCMSは事業継続マネジメントシステムのことであり、BCMを継続し、改善し続けるための仕組みのことを指します。上述の工場やチェーン店の場合、検討すべき要因が多岐にわたり、その定着も時間がかかります。そこで、繰り返し訓練や計画の改善を行い続ける仕組みが必要となります。その基準になる規格はBS25999として発行されています。品質や環境、情報セキュリティのマネジメントシステムとの互換性もあるので、組織力向上の施策として有効です。
BCPの検討項目|安全から会社組織についてまで
次にBCPの検討項目について説明します。大きく以下の4つに分類されます。
- 安全管理
- サプライチェーン
- 財務関連
- 人員・組織
それぞれ説明していきます。
安全管理|緊急事態に対する社員の安全やライフラインの確保
まず安全管理は基本的な安全を確保するための項目です。最低限この項目が検討されていなければ社員を危険にさらしてしまいます。優先的に計画しましょう。それでは以下で項目を見ていきましょう。
安全
職場で緊急事態が起こった場合にライフラインの枯渇や事故などの危険がないかを事前に検討し、対策やマニュアルを講じます。
食料
もし食料供給ラインが断たれた場合に自社にはどれくらいのたくわえがあるかご存知でしょうか。全員の食料を確保した場合にどのくらい持つのかを試算しておきましょう。
連絡
緊急の際の連絡方法などの検討は行われていますか?もし携帯や通信が遮断された場合に公共のルートなどを使う場合の方法など、事前に周知しておければ非常事態でも社員同士の連絡が可能となります。
訓練
また工場などの場合は事故等の2次災害の危険性もあります。その場合には日ごろから危険に対する対処を訓練しておかなければいざという時に対応できません。
サプライチェーン|顧客に商材を提供するまでの各ルート
次に顧客に商材を提供するまでのルート(=サプライチェーン)の各工程に対するリスクや事前予防策の検討を行います。具体的な項目を以下で説明します。
設備
自社が保有している設備が緊急事態にどんなリスクがあるのかを検討します。事故などで運転停止、事業がストップした場合に代替出来るものがあるか等を検討します。また反対に設備は健在だが、供給出来なくなった場合に他の利用方法があるかという検討もあります。
顧客
非常事態に陥った場合に、顧客への供給をどうすべきかを検討します。”どのタイミングで供給を停止するか”、”どこまで事態が収束したら供給を再開するか”の基準を設定するとよいでしょう。基準の設定が難しい場合もあると思いますが、自社なりの方針だけでも決めて置ければ有事の際の対応がスムーズになります。
仕入れ
緊急事態のときに仕入がストップする可能性を検討します。サプライヤーの特徴や、他の仕入先候補があるかなどを検討します。また、代替品が存在するか、存在する場合は代替品の仕入先についても検討します。
財務|緊急事態のへこみの分析と対応策の検討
そして財務について試算を行います。マイナス額の試算やその予防策を検討していきます。以下で各項目について説明していきます。
リスクの検討
まず非常事態の損失要因の検討を行います。派生要因は多岐にわたるためブレストして見てもよいかも知れません。
損失の概算
非常事態の規模や期間に応じて損失額を試算します(概算で構いません)。自社の体力が明確になります。
保険
上記項目で検討したリスクに対して入れる保険があるかを確認します。カバー範囲やランニングコスト等を確認します。
制度
今回のコロナ給付金など政府や公的機関からの給付金制度などを確認しておきます。自社に資格があるかや、その手続き方法などを確認しておけばいざというときに迅速に対応し、被害を最小化出来ます。
キャッシュフロー
上記項目の検討後、非常事態における自社のキャッシュフローを確認します。もし賄い切れていないのだとすれば何らかの対応策を講じる必要があります。
組織・運用|非常事態における組織体制の検討
最後に、非常事態における組織体制や運用方法について検討します。上記の各分類が検討・周知されていたとしてもレポートラインや運用方法が明確になっていなければ、実際に動くことはありません。それでは各項目を見ていきます。
指揮系統
非常事態のレポートラインや指揮系統を明らかにしておきます。可能な範囲で良いですが、社長の不在やマネージャーの不在等の可能性を考慮しながら複数のストーリーを検討しておきましょう。
運用体制
上記で検討してきた計画の運用方法を決めておきましょう。誰にどこまでの権限があり、どの程度自主的に動いてよいかなどを検討しておく必要があります。
優先度
最後に上記全ての項目に対しての優先度を大まかで良いのでつけておくと良いでしょう。重みづけがないとどれから始めたらよいかわからず、事態の好転が見込めません。
BCP書き方の手順|”リスク” ”予防” ”回復”の3工程で進める
最後にBCPの書き方の手順について説明していきます。手順はまずどんなリスクがあるかを検討し、各リスクに対して事前に予防出来ることはあるか、もしそのリスクが発生した場合に回復策として有効なものはあるかを検討していきます。
以下で各工程を説明していきます。
リスクの検討|最悪の事態を想定する
上述のBCPを作成すべき非常事態で説明した項目に対して、もし発生した場合にどんな被害の可能性があるかを検討します。規模や期間、場所などいくつかの変数を設定し、検討するとやりやすいでしょう。期間が長い場合は2次被害の可能性も考えられると思います。
ここではブレストベースで幅広くアイディア出しをしていきましょう。
予防策の検討|最悪の事態を回避する方法
リスクの検討で出したアイディアの中で事前に予防出来るものを分類して、それぞれに対して予防策を設定していきます。今すぐに予防策を講じることが出来るものもあれば、早いタイミングで策を講じることで被害の最小化が出来るものもあると思います。実行のタイミングも合わせて設定しましょう。
回復策の検討|最悪の事態から回復するための方法
そしてもし被害が出てしまった場合に最速で回復するための手段を検討します。コアとなる部分さえ復旧できれば稼働出来る場合や、仕入先と顧客が肝となるのでコミュニケーションを最優先するなどがあると思います。例えば、食料なども自社の社員だけではなく、関係ステークホルダーの分も確保しておけば、復旧後の事業再開もスムーズに行くことも考えられるでしょう。
まとめとテンプレート
今回のBCPの書き方についてまとめます。
- 書くタイミングは今(思い立ったら)
- 作成にあまり時間をかけすぎない
- ”安全管理” ”サプライチェーン” ”財務関連” ”人員・組織”に対して対策する
- 手順は”リスク” ”予防” ”回復”の順で書く
以下のURLからテンプレートがダウンロードできます。是非お役立てください!
最後までお読みいただきありがとうございました。大変な時期ですがこの記事が少しでも皆さんのお役に立てればと思います。
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